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45 楓真との出会い/繁村浩成という男

 そこはいつもの帰り道とは違う、路地を入った裏道──  仕事終わりの浩成は、この日はたまたま違う道を歩いていた。  定時に上がり、同僚が噂していた美味しいというコンビニスイーツを買いにまわり道をして帰っていた。  浩成は特別甘いものが好きなわけではない。流行りのスイーツだの何だのを聞いてもこれと言って心ときめくこともなく、勿論普段なら食べようとも思わない。それなのにこの日に限ってはそうではなかった。  難しいだろうと言われていた取引先との契約を成功させ気分も良く、日頃の疲れを癒すのも悪くない、たまには甘いものでも食べてみようと思ったのがきっかけだった。  ポツンとある小さな公園。公園と言っても古そうなベンチがあるだけのちょっとした広場のような場所。ひっそりと佇む自動販売機の明かりに羽虫が数匹集まっているのをぼんやり眺めながら、その先にあるコンビニへ向かう。人通りもなく寂しい道を一人進み、目的のスイーツと缶ビールを二本を購入してから、また来た道を戻った。 「あれ……?」  先程通った公園のベンチに男が一人座っているのが見えた。人もあまり通らないようなこんな所の、お世辞にも綺麗とは言えない古びたベンチに項垂れたように座っている人物に否応なしに目が行ってしまう。浩成は道すがらその男の様子を盗み見するも、男は身動きひとつせず、足元に視線を落としたままだった。  見たところ自分より若い男。派手な髪色といい服装といい、自分とは真逆な人種に思えた。そんな風貌の男が一人こんな所で項垂れている理由は、具合が悪いか泥酔しているか……待ち合わせ、というような場所でもないし、と浩成は不審に思う。それでもこの先に飲み屋も数軒あることもあり、酔っ払いかな? と、気になりつつも特に声もかけずに家路についた。    浩成は真面目な性格で、毎日同じルーティンで日々をこなす。  気心の知れた友人や恋人も特におらず、ほぼ毎日一人暮らしをしているマンションと会社の往復で一日が終わっていた。  そんな浩成の日常に起きた小さな変化。その日見かけた一人の男がどうしても気になってしまい、次の日もまた浩成はまわり道をして、あの公園へと向かっていた。  誰もいない公園──  よく考えれば連日同じ状況で男がここにいる訳がないとわかるのに、浩成は何を期待していたのだろう。仮にあの男がいたとして、一体どうしたかったのだと自分でもよくわからず、戸惑うだけだった。  

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