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53 友達

 このことがあって楓真に認識されてしまった今、浩成は公園に寄るのを少し減らした。千晃と出会す(でくわ)ことのないように、極力楓真が一人でいるであろう日を見計らって公園に寄り、そして楓真との距離を縮めていった。    公園で会うことができたら、隣に座り少しだけ会話を楽しむ。  今日あったこと、よく変わる楓真の髪型、髪色の話、昨晩見たドラマの話、面白かった映画の話、好きな食べ物の話……など、そんな他愛もない会話で笑い合った。遠くから見ていただけのあの時とは違い、昔から友達だったように打ち解け、一緒にいるだけで楽しくてしょうがなかった。  束の間の逢瀬──  それはほんの数分という短い時間でも、浩成にとってかけがえのない大切な時間だった。楓真も浩成の姿を見つけると嬉しそうな表情を浮かべるようになり、それがこの上なく幸せに感じた。話せば話すほど、楓真のもつ様々な魅力に気付かされる。派手な見た目に反した真面目な一面、とりわけ恋愛観に関しては浩成同様、初心(うぶ)な印象を持ち益々好感が持てた。  だから尚更、千晃の楓真に対する言動が浩成には理解し難く腹立たしかった。 「ねえ……また?」 「え? ああ、これ? 大したことないから……大丈夫」  楓真とここで会話を楽しむようになってから、度々その体に残る暴行の痕が気になった。浩成はやはり黙っていることができずにその都度楓真に聞いていた。聞く度に楓真は気まずい顔をし、「何でもない、大丈夫」と話を終わらせようとする。この時にはもう、それはDVなのでは? と感じていて、それとなく話をしてみるも楓真からはちゃんとした答えを得ることはできず、もどかしさだけが増していった。  最初の時のような、顔に分かりやすく残る殴られたような痕はないにしろ、首元の鬱血痕や手首の擦れたような傷はどうしたって目についてしまう。キスマークと思しき痕と、殴打の痕……手首のそれはもしかしたら縛られた痕なのでは、と思わずにはいられなかった。 「あのさ、言いにくいんだけど、一緒に住んでるっていう友達ってさ……君の恋人なんじゃないの?」 「えっ? 何で? だって男、だよ……」 「うん、知ってる」  浩成の問いに明らかに楓真は動揺していた。 「恋人って……そんなのおかしいじゃん。なんでそんなこと言うんだよ……違うよ……」 「別におかしくなんかない。同性で交際している人だっているでしょ」  そう。おかしいことなんてない。ゲイである浩成にとって、楓真の発した言葉は人格否定されているようで嫌だった。それに隠さなくてもいいんだ、俺も楓真と同じ、同性である楓真のことが好きなんだよ……と、伝えてしまいたくなる。 「それ、同居しているっていう友達にやられてるんでしょ? そんなに気が荒い人なの?」  友達、ましてやそれが恋人なら、愛おしい相手を傷つけるようなことはしないし、自分なら絶対にありえないことだと楓真に伝えた。  

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