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1-コンクリートジャングル(7)

百合人がまじまじと琉夏の画像に見入っている。 「うん?何か気になる?」 その目は同居人の色恋をからかうものではなく、テーラーとしてのそれだった。 「この方でしたら、もう少し冒険しても着こなしてくださりそうですね」 おお、百合人がまだ乗り気になってくれている。 「多少は派手めになっても大丈夫だぜ。琉夏は目鼻立ちがはっきりしてるから、服に着られるってことはないと思う」 「本当にそうですね……明日はライトグレーで明るくさせていただこうと思ってたんですが、それよりも、ダークスーツでワイシャツを濃い色に変えた方がずっと映えそうです」 楽しそうに写真を眺めている。 「お、それいいな。見たい。要らない女性人気が出そうだけど、俺もそれ見たい」 「でしょう?着せ甲斐がある方ですね。嬉しいです」 百合人は写真から目を上げて、微笑んだ。 「だろ?」 「始めに普段着のショットを拝見した時は、どうなることかと思いましたけど。ふふ」 この琉夏着せ替え大作戦を始めるにあたって、肝心のテーラーがターゲットに会うことができない、というのが最大の課題だった。 当初は無謀かと思いもしたが、話を聞いた百合人が自信ありげだったので、俺も百合人を信じて任せることにした。 パーティは昨日のことだ。 昨日の夜家に帰ってから百合人にこの話を持ち掛けた俺は、当然、一、二週間後に決行かなと勝手に考えていた。 ちょうど気分が良い時だったのか、話を聞いた百合人が予想以上に乗り気だったので、もしかしたら来週中にはできるかな、とは思った。 あにはからんや、翌朝起きてみると、リビングに完成したスーツが掛けてあった。 「ゆ、百合人?!」 驚いた俺は寝間着のまま百合人を探した。 キッチンにいた彼は、上機嫌でスープを温めているところだった。 「おはようございます、明人さん」 「ゆりと?!なにあれ、まさか昨日話したヤツもうできたの??」 「はい」 にこりと百合人は満足そうに笑っていた。 「どういうこと?!なんでスーツ出来てんの?!だって話したの昨日の夜だよな?あれ、まさか俺が一週間ぐらい寝てたってオチ?え?」 俺は混乱していた。 だって、一晩でオーダーメイドのスーツが完成するなんて思うか?! 無理だろ!どう考えても!

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