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1-コンクリートジャングル(11)

「昨日の晩御飯は、グラタンだったんです」 休憩スペースに移動した俺たちは、ドリンクを手に、ソファに腰を下ろした。 「なんかガッツリ料理したい気分だったんで、ベシャメルソースから手作りで、気合入れたんです」 「おい」 「槙野さん、食べる量は少ないけど、好き嫌いほとんどないし、美味しいって言って食べてくれるから、俺頑張ったんです」 話しているうちに神崎の顔は明るくなってきた。しかし。 「聞いてるのか、おい」 「鈴ちゃんと珠ちゃんが遊ぼうって催促してきてたけど、忙しいからごめんねって」 「鈴?誰だよそれ」 「姉です」 「ああ、そういえば槙野のところは猫いたな。おい、俺は槙野と琉夏の話があるっていうからここまで来たんだぞ。お前んちの晩御飯事情には一切興味ないんだが」 「おでこ痛いなー。これもしかして、内出血してません?どう思います?……黙って聞いてください」 神崎のくせに脅してきやがった。 スポーツドリンクを一口飲んで神崎は先を続ける。 「グラタンは上手に焼けたんです。槙野さんのお風呂上がりにタイミング合わせて、美味しそうにできたんです」 「あー」 今度から、重い物を手に持ってる時には気をつけよう。 弱みを握られて脅されるかもしれない。 今日はいい勉強になったな。うん。 「さくさくかりかりとろとろで、大成功だったんです」 「ほー」 いつになったら本題に入ってくれるんだろう。 俺は心を無にして、手にしたペットボトルをちゃぷちゃぷと弄んだ。 「で、テーブルに並べて夕飯にしたんです」 神崎はその時のことを思い出したのか、ちょっと表情を和らげた。 「槙野さんは美味しいって言って食べてくれたんです。実際美味しくできてました」 「はいはい」 「でも、その後なんですけど……」 一気に神崎の顔に影がさした。 「何となく雑談してたんです。昨日あったこととか思い出して」 やっとか。やっと本題に入ったのか。 「槙野さん機嫌よくて、珍しく笑いながら早野さんのこと話してて」 確かに、槙野が笑いながら話すなんて珍しい。 「あんまりずっと早野さんの話題だったんで、俺、面白くないから話を変えようとしたんですけど、どうやっても早野さんの話に戻っちゃって」 「ふーん」 「前にちらっと聞いたんですけど、早野さんってずっと槙野さんの下についてるんですよね?なんでですか?」 神崎の顔が必死だ。 追い詰められてる。

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