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1-コンクリートジャングル(16)
「お待たせしてすみません!」
予定よりも早く米田さんが到着した。
「言ってたのより早かったね。ご苦労様」
「うちのひとが車出してくれたので!電車で来るより速いんです。……やーもう、メイクも落としちゃったので、マスクに眼鏡で失礼します!」
あっはっはと豪快に笑った彼女は、本番機の前に座った。
「あちゃー。やっちゃったんだね、君」
処理状況のアイコンを見てため息をつく。
「俺なりに調査した結果があるけど、要るか?」
「いるいる!教えて!」
米田さんは琉夏と同期だ。仲がいいかは知らない。
データを見ながら、琉夏がさっき調べたことを説明している。
「うんうん。……ん。はい。……あー、はいはい」
説明を聞きおわった彼女は、深く深く頷いた。
「ありがとうございます。その通りです。……ですが、今日ここで処理を終えるわけにはいかないので、できる限りのことをします。……ちょっとその許可貰ってくる」
米田さんは外線電話を取り上げて、どこかへ電話をかけている。おそらく上長だろう。
「俺は席にいるから、人手が必要なら声かけてよ」
琉夏にそう言い置いて、俺は自席に戻った。
自分の仕事をしに来たわけじゃない。
この後のプランを考えよう。
予定していた店は、ラストオーダーが二十時だ。
まだ滑り込む余地はありそうだ。
駄目だったら……琉夏は何が好きなんだろう?
このまま和食?中華?それとも洋食?
バルの類は賑やかすぎるから、今日は避けたい。
あ、とんかつもいいな。
昨日琉夏と行ったお蕎麦屋、美味しかったな。
お蕎麦で一杯。
このディナーの誘いも、『白焼きで一杯』で落としたようなものだし、琉夏好きそうだな。
お蕎麦屋は……二十二時までやってるところもあるみたいだ。
ここを出る時間次第だな。
さて、どうなるか。
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