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2-けもの道(1)

今日は良い天気になったな。 晴れ渡った空は高く清々しく、ぴりっと冷たい空気は肌を引き締める。 最近急に冬らしくなってきた。 夏のうだるような暑さはどうにも苦手な俺だけれど、冬は好きだ。 寒い中ぬくぬくと防寒して白い息を吐くのは気分がいい。 たとえ冷えてしまっても、恋人と手をつなぐ言い訳にもなるしね。 なんて言ってみても、俺恋人いないんだけど、さ。 琉夏、手をつないでくれないかな。 昨日ちょっとだけ手をつないだけど……ううん、あれは俺が琉夏の手を勝手に握っただけだな。 あの大きくて温かい手で、俺をあっためてほしいな、なんて年甲斐もなく可愛らしいことを考えてみる。 だって寒くてさ。いいだろ? これくらい。 さて、そろそろ曲がった方がいいのかな。 大通りから一本中に入った道沿いのはずなんだけど。 どこに向かってるのか? 琉夏の家だよ。 もちろん、俺が強引に押しかけてるんじゃなくて、ちゃんと琉夏と約束してるから。 ふふ。 買い物……という名目のデート。 昨日鰻の蒲焼きを食べながら、偶然居合わせた槙野と神崎を巻き込んで、なんとか約束を取りつけた。

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