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2-けもの道(2)

昨日の夜の話。 鰻屋で、偶然居合わせた槙野と神崎を俺たちの横に座らせた。 「良いだろ琉夏? 一緒に行こうぜ。なあ聞いてくれよ槙野、明日琉夏と買い物に行きたいんだけど、琉夏ったら相手にしてくれないんだよ」 「早野と? 何を買いたいんだ?」 ふふ、槙野が話に少し乗ってきてくれた。 「靴だよ。通勤で履けるような革靴が欲しいんだ。琉夏に今履いてもらってるの、俺のお古だからさ。このままじゃ琉夏に悪いから、ちゃんと琉夏に似合う靴を揃えたいんだ」 「俺は今まで通りスニーカーで通勤するから、ご心配には及ばないっての」 琉夏が寝ぼけたことを言っている。 もう二度とあの偽オフィスカジュアルなんかには戻させないのに。 そしたらそこに神崎が口を挟んだ。 「すにーかー? 早野さん、スーツにスニーカーは合わないと思いますよ」 神崎、ナイスアシスト! ちょっとだけ見直してやる。 そこからは神崎のファインプレイが光った。 「馬鹿野郎、スーツなんてもう着ねぇよ」 「えー。昨日今日と、スーツ似合ってますよ。俺はスーツの早野さん好きです」 「、」 神崎の押しに琉夏が思わず黙る。 「いいじゃないですか、スーツ。今もすっごくかっこいいですよ? 駄目ですか?」 神崎の無邪気な眼差しと言葉が琉夏を追い詰める。 「駄、目じゃねぇけどよ……」 「ほらぁ。朝とか、何着てこうかって悩まなくていいし、楽ですよ?」 いいぞ、もっといけ神崎。 「コーディネートで、悩まなくていいんですよ?」 「いや、そんなんで悩んでねぇし。目についたの着るだけだし」 それを聞いて槙野も参戦した。 「俺は立場上あまり強くは言えないが……早野、もうちょっと着るものに気を使ってくれると嬉しい」 「う」 「あと、髭も適度に剃れ。生やすなら整えろ」 「うえ、」 ふふ、もう少しかな。 「そうだ、明日槙野と神崎も一緒に出かけないかい? 俺がよく行くところか、気に入ったのがなければどこか別のところにでも行こうかと思ってるんだけど」 「行きましょう! 槙野さん、俺行きたいです」 神崎がそう言えば、槙野の返事は決まってる。 「そうか。じゃあ行こう」 即決。 「琉夏も行くだろ? まさかここまできて、行かない、なんて野暮なこと言わないよな?」 「え、いや、」 琉夏が口ごもっていると、神崎が最後にゴールをきめた。 「やったー! ダブルデートだ!」 「は? いや、デートって何」 琉夏が何か言っていたけれど、もう聞こえない。 ふふ。デート決定! その勢いで、琉夏の家に集合すること、昼食は琉夏が何か作ってくれること(!)が決まった。 神崎、あいつ無邪気なふりしてなかなか、やる。

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