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2-けもの道(7)

「お邪魔するよ」 「琉夏んち久しぶりー……痛っ! 琉夏、痛い! なんか踏んだ!」 秋さんが顔をしかめて片足を上げると、ぽろりと小さな何かが落っこちた。 「ああ、わり。ネジだな」 琉夏がそれだけ言って拾い上げた。 「助かったわ、一個だけどうしても見当たんなくてさ。PCケースの蓋のネジ。探すの諦めてたんだ」 「もー! さっきからパーツ落としすぎ!! 危ないだろ! 自分の部屋でやれよ!」 「自分の部屋でやってるだろ」 「! んもーーー! だ、か、らぁ!」 そりゃ自分の部屋だけど! と言いたげに秋さんがこぶしをぶんぶん振り回す。 「入れてやったんだから、細かいところは多めに見ろよ」 兄の怒りを、弟は携帯を操作しながら鼻先で笑って流す。 「お、真冬につながったぜ」 琉夏が通話をスピーカーにして携帯を差し出した。 『ん、琉夏? おーい』 「はいよ。俺だけど。今、話いいか?」 『うん。なんだよ?』 通話口からは低めの落ち着いた声が聞こえてくる。 秋さんより琉夏の声に近いかも。 「真冬! どういうことだよ! 僕の電話には出なくて、琉夏のは出るって! えこひいきだぞ!!」 秋さんがきゃんきゃん吠える。 『秋と一緒なのか? 何言ってんだ秋。琉夏の電話にしか出てないってだけだろうが。プライベートのは琉夏だけ出るって決めてんだ。それよりなんで秋と琉夏が一緒に居るんだよ』 秋さんが事の経緯を説明する。 「だからさ、真冬のとこに泊めてもらえって、琉夏が言ってんの」 『俺が断ったらどうなるんだ?』 秋さんが琉夏の顔を見る。 「……仕方ないから、新しい部屋見つかるまでは置いといてやるよ」 「ありがと琉夏……! やっぱお前は可愛い弟だよ……!」

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