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2-けもの道(13)
「はいはいはい! 準備できてますよぉ」
キッチンから神崎と槙野が次々に皿を運んできて、テーブルに並べる。
琉夏がスーツに着替えさせられている間、神崎が昼食の仕上げをやってたんだ。
「悪いな、神崎。ありがとう、助かった」
琉夏が神崎を見やると、神崎はにっこり笑った。
「気にしないでください。あ! 言っておきますけど! 俺は餡温めて麺にかけただけですから! 味についてはノータッチですから!」
何の含みか、神崎はそんなことを言う。
総勢六名になった俺たちは、食卓とセンターテーブルに分かれて座った。
献立は餡かけ焼きそば。野菜がたっぷりで美味しそうだ。
「いっただっきまーす」
秋さんが先陣を切って、俺たちも後に続いて食べ始めた。
「あ、美味しいよ琉夏」
「うるせぇ」
「麺がカリカリに焼けてるとこ手が込んでて美味しいです! カリ旨です!」
「黙って食え馬鹿野郎」
お世辞抜きで美味しいのだけれど、俺や神崎が褒めても、琉夏が賞賛の言葉を素直に受け取ってくれない。
「もー。こういう時くらい、ありがとうって言いなよ。ごめんなさい、ひねた弟で」
秋さんが申し訳なさそうに笑って、俺たちに向かって軽く頭を下げた。
「今日は皆さん、これからお出かけですか?」
真冬さんが辛子のチューブの蓋を開けながら、俺たちに聞いた。
「はい! 早野さん……あーぅえーっと、琉夏さんの靴を買おうって話になって」
神崎が答えた。
「靴?」
「スーツに似合う靴を探しに行ってきます!」
「なるほど。琉夏は革靴なんて持ってないからな。いい買い物ができることを願ってるよ」
真冬さんはそう言って、にこりと微笑んだ。
ジェントルだなー。
そんじょそこらじゃ見れないカッコよさに、神崎もキラキラと憧れの視線を送っている。
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