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第2話
僕が意識をとりもどしてしたことは、家から逃げ出すことだった。
目に見えないわからないものに、一晩中胸を弄られ鳴かされたのだ。
怖くないわけがない。
あれはなに?
何なんだ?
とにかく、身の回りの荷物だけもって、友達の家にかけこんだ。
理由は言えない。
言えるわけがない。
見えないものにイカされまくったとでも言えと?
ただ、しばらく置いてほしいということと、あのアパートを引払うつもりなことと、引っ越しを手伝ってほしいことは言った。
真っ青な僕の顔を見て、友達は尋常じゃないことだけは察してくれた。
友達の家でシャワーを借りて、浴室で泣き崩れた。
胸は腫れ上がり、胸の周りには噛まれた跡がしっかりついていて・・・あれが夢じゃないと証明していたからだ。
胸は。
火照ったように熱かった。
何故か少し股間が硬くなった。
あれほど出したのに。
僕は泣きながら冷たいシャワーで胸や股間を冷やし、友達の狭い部屋の床を借りて、寝袋に潜り込んだ。
友達は笑いながらゲームをしていて、その雑音に安心した。
もう。
あんなことは。
ない。
それはいつぐらいの時間だっただろか。
夜更けだとは思う。
ふと目をさました。
友達が今度はタブレットでネット番組を見て笑ってた。
それに安心した。
その時だった。
舌を感じた。
舐められた。
まだ腫れた胸を丹念に舐められた。
腫れている胸を癒やすかのように優しく。
狭い寝袋に一人入っているのに。
いや、昨日だって、うつ伏せになろうがどうしようが関係なかった。
実体がないから。
コイツには。
寝袋の中の僕の胸を、寝袋も服も無視して、それはまた舐めはじめたのだ。
昨夜のように。
僕は悲鳴をあげたかった。
助けをもとめたかった。
でも恥ずかしかった。
友達に、こんなところを舐められて、乳首を勃てているところなんか・・・ああ、また僕の性器は僕の意志を裏切り勃起しているのだ。
怖いのに。
怖いのに。
舐められている。
優しく始まったそれはいま、むしゃぶりつかれていた。
腫れて敏感になった乳首は痛痒い感覚を全て拾いあげる。
声が出そうになる。
腰が揺れそうになる。
口を抑えて堪える。
歯をかみしめる。
ああ、やめて。
吸わないで、吸いながら舐めないで。
舌で転がさないで。
反対側を指でつぶし始めた。
反対側を摘ままれ、こちらは舐められながら噛まれた。
ビクンと背中が反るのをとめられなかった。
「どうした?」
友達に気づかれた。
「なん・・・でもな」
なんでもない、と言おうとしたけれど、強く噛まれて、摘ままれて、とうとう叫んでしまった。
「ああっ!!!」
寝袋の中、服を着たまま射精していた。
腰がガクガク揺れた。
胸を寝袋の中で突きだしていた。
舐められ、吸われ、弄られ、噛まれるのが、気持ちよくて。
それはまた、執拗に僕をせめはじめる。
「どうしたんだよ」
友達が寝袋から僕を引きずり出すのをとめられなかった。
友達は呆然と僕を見た。
僕のパジャマ代わりのTシャツは捲りあげられ、ズボンは下着ごと刷りおろされていた。
友達は喘ぐ僕の姿に驚きもしただろう。
でも友達にもわかった。
僕の胸の肉が見えない指で沈むのも、見えない舌が乳首を転がすのも、胸に歯形が、きざまれるのも。
舐める水音も。
濡らす唾液も。
「なんだよ・・・これ」
友達は青ざめた。
僕は友達が見ている前で、胸だけでイカされる。
見せつけるように乳首を指で潰される。
舐められ、歯を立てられる。
見られたくなくて、身体のむきを変えようとしたら、見えない腕が僕の動きを拘束してそれをさせない。
恐怖がさらに増す。
昨日は舌と指だけしか感じなかった。
昨日は舌と指からはにげられなかったけれど、身体の自由は奪われなかったのに。
友達の視線からのがれられないように身体を拘束されて、僕はまた胸を執拗に責められた。
「いやっ・・・いやぁっ・・・ああっ・・・」
僕は声を零してしまった。
もうそうなったならとまらなかった。
鳴く。
鳴き続ける。
浅ましくそそり立つそこは、昨日も散々出したのに、また出した。
驚愕している友達の前で僕は腰を震わし、何度も何度も達したのだ。
見えない腕で押さえつけられながら。
でも本当の恐怖はそれからだった。
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