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「げぇ〜〜〜〜なんだこれ!埃まるけじゃんか!」 俺の身長よりも高い棚の上をほうきで掃くと、埃が舞い降りてきた。 「けほっ、……うわーやめときゃよかったなぁ。」 そういえば店を掃除するのって、じいちゃんと働いてた時以来だな。となると2、いや3年……? あまりの埃の多さに考えるのをやめた。 こんなんなら毎日ちまちまとやっとけばよかった。 じいちゃんと働いてた時は、そこそこお客さんも来てたから、毎日床を掃いてショーケースも磨いていたが、今は1日に3人来たら良い方だ。 どうせ誰も見てないだろうと、初めてさぼった日があったのだが、それを機に一切掃除をしなくなった。 1人で働くようになってから、ようやく作り上げた俺の城だと思っていたが、これじゃとんだボロ屋敷だ。 「週に1回くらいはしないとなぁ……。」 毎日見慣れていたから気にしていなかったが、確かに汚い。趣のある汚さとかじゃなくて、ガチで引く方のやつだ。 ……これじゃ客が来ないのも当たり前か。 しぶしぶ掃除を進めていって数時間、ようやく店内の澱んだ空気が入れ替わる。 薄暗く、気味悪い雰囲気を醸し出していた豆電球は鮮やかに発光し、埃や油で汚れて中身がほとんど見えなかったショーケースも、きちんと見える。 以前の姿を取り戻した店内をぐるりと見回し、深呼吸して勢いよくカウンターの椅子に腰掛けた。 「あ"ーーー疲れた!!」 体感では1週間分の労働をした気がする。近くにある商品を見ると15時過ぎを指していた。 まだこんな時間かよ……。 どうせ誰も来ないし、近くの自販機で飲み物でも買ってこようと立ち上がる。 「あれ、また止まってる。」 先程直した懐中時計が、あれから動いてないことに気付く。これだけ直してから行くか、と懐中時計を手に取って再びカウンターへと入った。 「そろそろ中がダメになってんのかな…。」 修理道具を引き出しからいくつか出したうちの一つで、懐中時計の裏蓋を取った。 「これの代えの部品は、……っと。」 また別の引き出しを開けて部品を探す。 何十年も前のだから、代替え品でも動くかどうか…。 いつくか引き出しを開けて、1番足元の引き出しにたどり着いた時、ようやく代えになりそうな物を見つけた。 「よし、これで。」 と、頭を上げた時、閉まりきっていなかった引き出しの角に頭をぶつけた。 いた!と喉元まで出かかった声は次の瞬間、悲鳴に変わる。 「あーーーーー!!!」 頭をぶつけた衝撃で、カウンターの上に広がっていた懐中時計の部品が床に散らばってしまった。 しまったしまったしまった! 焦って部品をかき集めるが、しっかりと内部の配置を見ていなかったから、これで全部なのか分からない。 やばいぞ、と冷や汗が頬を伝ったその時、床がいつものフローリングではないことに気付く。 じゃり、とした黄土色。 床についていた掌には細かい砂がくっついている。 「え。」 なにこれ。と砂を払うと、ざわざわと周りの雑音が聞こえてくる。 大きな通りの両側には平家の店がずらりと並ぶ。 和服と洋服が入り混じったような服に身を包んだ人達が、俺に視線を送る。 懐中時計どころではないと感じた俺は、辺りを見渡し、場所を確認した。

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