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違う。いつもの商店街じゃない。
商店街の路地裏はここ以外にもいくつかあるが、こんな場所見たことない。
道の真ん中で座り込んでいる俺に振りそそぐ視線を避けるため、道の端へ移動した。
待って。どうなってるんだ。夢か?俺、寝落ちた?
ぱちんっ。と頬を強めに叩くが、確かに痛みを感じた。
道行く人は好奇の目で俺を見る。
女性は着物のような服の裾を口元に持ってきて、何やら話している。その隣にいる男性も帽子を目深にかぶり、女性と何か相槌をうっていた。
やばい。そう直感で感じた俺は全力で走った。
なんなんだこれ。どうしちゃったんだ。
背中から、逃げたぞ!追え!と怒鳴り声がしたが、あっという間に聞こえなくなった。
人気のない小道に座り込んで、息を整える。
薄暗い街灯に照らされた通りは、度々人が行き来する。
俺を探している訳ではなさそうだが、先程のことを考えるとあまり出ないようないい気がした。
はあ〜、と深いため息をついて、蹲る。
「どこなんだよ。ここぉ。」
ポケットに入れていたスマホを見るが、電源がつかない。
こんな時に限ってバッテリー切れかよ。
無我夢中で走ったからここが何処か分からないし、人に尋ねようにも、また追われてしまったら逃げ切れる自信がない。
夢なら早く覚めてくれ。と呆けていると、ざり、と足音が聞こえた。
しまった。反対からだ。
足音の主がさっきの男なら、隣に見える通りを通って逃げなければならない。そうなると人目についてしまう。
何人かで追いかけられたら、それこそ俺、お縄にかかるのでは…。
だめだ。諦めよう。そう悟った瞬間、頭上から声が降ってきた。
「……清治?」
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