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「ところでどうやって2020年?に帰るんだ?」
「……分からない。」
そもそも俺はいつも通り店番をしてただけ。
どうしてここに来たのかなんて知る訳がない。
「うーん、そうだな。じゃあこうしよう。お前をここに置いてやるから、俺の世話してくれ。」
「はあ?」
「家事をしてくれってこと。お前得意だろ。」
「得意じゃないよ。でも、倫太郎さんはそれでいいの?」
「どういうことだ?」
「だって、倫太郎さんからしたら俺、超怪しい人じゃん。何するか分からないよ。」
「はははっ。そんなひょろいナリで何ができる。しかも怪しいのはお互い様だろ。」
……確かに。
むか、ときたが言い返せないのが事実。
肩幅、胸筋、腕の太さを見る限り倫太郎さんは体格が良い。着流しからでもそれは分かる。
はっ倒されるのは俺の方だ。
「じゃあ早速今日の晩飯、よろしくな。」
「倫太郎さん。冷蔵庫どこ?」
「冷蔵庫?そんな贅沢品あるわけないだろ。」
あーそっか。ここ現代じゃないんだ。と冷静になる。
台所と案内されたのは、流しとかまどらしき物があるだけで、床に米の袋と野菜がいくつか転がっていた。
これで飯を作るのは、学生の時のキャンプ以来だなぁ。
とりあえずこの家にある調味料を確認して、なんとなく献立を考える。味噌はあるから味噌汁にして、あとは米と、あ、バターはあるんだ。
とんとん、と手際良く野菜を切っていく。
切った大根とにんじんを鍋に入れて、火をかける。
あとはじゃがいもをちょこっとだけ切れ目入れて……。
後ろがあまりに静かなので気になって、ちらりと倫太郎さんの様子を伺うと、何やら真剣そうに地図と書類を見ているようだった。
倫太郎さんは何の仕事をしてるんだろう。
するとこちらの視線に気付いたようで、ばち、と目が合う。
「なに?何か足りないものあった?」
「あ、いや別に。何の仕事してるのかなと思って。」
「ああ、趣味だよ。俺地図見るのが好きなの。」
「はあ………。」
返答に困った俺は、再び台所に体を向けた。
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