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どっちに夢中

「ねえ。」 「ねえねえ。」 「ねーえってば!」 「っだー!うるせえ!今真剣なんだよ!」 コントローラーを持つ手に駿太が腕を絡ませてくるが、俺はなんとかしてそれを振りほどくと、「ひどい、皐月が構ってくれない…。」と部屋の隅で落ち込みはじめた。 今は俺の家でテレビゲームをしている。 「新作のゲームを買ったから今日は真っ直ぐ帰らせてくれ。」と頼んだのだが、駿太はそのゲームに興味津々で。 一緒にやってもいいけど邪魔はするな。という条件付きで家に連れてきた。 が、この有り様だ。 元々ゲームをしない駿太は途中で飽きてしまい、俺をゲームから引き離しはじめた。 そもそも駿太が大人しく条件を飲むわけないと分かっていながら、安易に連れてきたのが間違いだった。 しかし、今俺は佳境を迎えている…! 何としてでも今日中にこの面はクリアさせたい! ゲームへの熱が最高潮に達し、俺は駿太を無い者として扱った。 「っしゃ!中ボスクリア!」 ガッツポーズを決めて前のめりで画面を見ると、視界の端で駿太が不機嫌な目線を送ってきてるのが見える。 だから今日は勘弁って言ったのに。 俺はそのまま無視してゲームを続けていると、ふいに駿太が立ち上がった。トイレでも行くのかと駿太を目で追うと、テレビの横でしゃがみ込む。駿太が手を伸ばしたその先は、 俺がそれを察した瞬間、家中に俺の悲鳴が響き渡った。 「おま、お前ぇ!何してくれんだよ!」 「だって皐月がゲームばっか見てるんだもん。」 「はあ!?家でゲームするって言っただろ!」 「でもちっとも俺のこと見てくれないじゃん。」 ぶす、とした表情で駿太が訴えかけるが俺は上の空。 駿太が怒っている事よりも、セーブデータを消された事の方がショックすぎて、駿太の声なんて全然聞こえていなかった。ああ、俺どこまでセーブしたっけな…。そんな僅かな希望を思い出しながら、泣きそうな心を励ました。 「悪い。ちょっと今ナイーブだから話しかけないで。」 「ナイーブなのは俺の方だよ!」 地団駄を踏みそうな勢いで怒る駿太。 すっかり感情を無くした俺がソファに崩れ落ちた。 あーだめだ。当分立ち直れないわ…。沸き上がる悲しみの感情に浸かっていると、大人しくなった駿太が俺の横に座ってきた。 悪い駿太。今日は誰とも話せそうにないわ。そう口にしようとした瞬間、ぎゅっと抱きついてくる。 「……ごめんね。」 すん、と鼻を啜りながら、そう小さく呟いた。 「皐月がゲームばっかに夢中になってるから、つい電源切っちゃった。でもそんなに落ち込むなんて思わなくて…。 ごめんね。」 抱きしめる力が強くなり、俺は俯いていた顔を上げた。 「まだ怒ってる?」 「………怒るっていうより、ショック受けてる。」 「あ、無理泣きそう。」と言って目頭を摘むと、駿太によってその手は払われた。俺が駿太の方を見ると、吸い込まれるように唇が近づいてくる。 「ん、う。」 「ごめんね。俺が機嫌損なわせちゃったから、責任とるね。」 そう言って俺の唇をとんとん、と指先で叩いて口を開くように促す。考える事をやめた頭は、素直に口を開けて駿太を迎え入れた。 「ふぅ、んっ、んぅ、んうぅ。」 「皐月、許してくれる?」 唇が触れる距離でそう囁かれるが、俺はぼーっと駿太を見つめるだけ。「まだだめ?」と呟くと困ったように首を傾げて再び唇を合わせた。 「ん、んあ、あっ、あう…。」 深い口づけに夢中になっていると、駿太の手が器用に俺のベルトを外す。完全に意識がキスに向いていた俺は不意な快感に声をあげた。 「あっ、ああっ、さわ、るな。ん、んんぅっ。」 「きもちい?」 「んっ、うん。」 駿太は勃ち上がる俺のものを力強く握ると、素早く上下に扱きはじめた。かくかくと震える膝を押さえつけるように俺の足と絡ませて、徐々に駿太と向かい合わせになるように移動させられる。 「ね、俺のも一緒にしていい?」 そう言うと、完全に勃ち上がった駿太のを取り出し俺のものとぴったりと合わせた。自分以外の体温を感じて震えると、後頭部を引き寄せられてもう一度キスされる。口内と、中心に感じる熱に身体が震えて駿太のカッターシャツを強く握った。 「あっ、んうっ、ん、んっんぁっ、あっあっあんんっ。」 「きもち、いね。もういく?」 尿道をぐりり、と指の腹で擦られて「あああぁっ。」の情けない声が漏れる。しかし駿太はすかさず俺の口を唇で塞ぎ、快感に溺れる声は駿太の中へと吸い込まれていった。 「い、いくっ、はなして、あっあっあっあああぁっ。」 「ん、あっ。」 びくびくと震える俺の肩を抱き寄せて頭を撫でる。 飛び出した精液は、お互いのお腹で混じり合い下の茂みを濡らした。そのまま駿太の胸に倒れ込むと大きな手で頭を撫でられ、俺は瞼を閉じてしまった。 「昨日の皐月は素直で可愛かったねえ。」 「お前反省してないだろ……。」 「しばらく俺ん家出禁な。」そう言うと、駿太はまた不機嫌な顔で俺を見つめた。

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