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第11話

「バケモノはバケモノを屠るに相応しい」  背後から、声が響いた。  見れば、バルがエィウルスを眺め、目を細めた。 「あれが、今は亡き血族の本当の姿とやらか。面白い。ただの四つ足の獣にすぎん」  その口元に浮かべたのは、冷笑。男は、笑っていた。 「貴様、どういうつもりだ」 「…いや、すまんな。お前もその生まれだったことを忘れていた。…あれは使える。たった一匹で、この有様だ。まったく、面白い」  ディーグは、バルの襟元を掴み上げた。 「面白いだと!あいつは、拒んでいたんだ。それを、こんな…」 「こんな?こんな何だ?聞けば、あやつは半人半獣の生まれ。己が血を尊ぶならば、汚れるのはあやつの牙と爪だけでいいではないか」  ディーグは、我が耳を疑った。そして口よりも先に、拳が飛んでいた。 「!」  ディーグの拳は、バルの頬を打つことはなかった。どこから現れたのか、バルの背後から、別の腕が伸び、それを止めた。  影のように伸びた腕は、ディーグの拳を掴み、微動だにせず押しとどめている。  ディーグは、闇に目を細めた。そこに、微かに赤い瞳が見えた。  「よい。かまわん、ディーグ。私も少々言い過ぎた。目を瞑ってやろう。どうだ、そろそろ片付いたか。火を灯して見るがいい」  燃料を巻きつけた松明を手渡されて、ディーグは火を灯した。  瞬く間に着いた火と、焦げた匂いが漂う。

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