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第13話
翌日、目を覚ましたエィウルスは、何も語ろうとはしなかった。
ただ、己の手を見つめ、時折握りしめていた。
ディーグは、何を問うこともなく、夜になるのを待った。
確かめるには、それが好都合だった。
夜も更けた頃、やはり、血の匂いに混じった香の香りが漂い始めた。
エィウルスに背を向け眠ったフリをしていたディーグは、その気配が部屋の中から消えていくのを見送った。
「あいつ…」
やはり、行き先は。
だが、そこで何が行われているのか、それだけがわからない。
「クソ…」
苛々と、窓辺の月を見上げた。
丸い月は、銀ではなく、爛れた紅い色で浮かんでいた。
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