16 / 20

第15話

 闇に目を凝らせば、そこには何かが、蠢いていた。  城壁を登り、次々に城内へ入り込む。  人間でも、獣でも無い。  その影の内の一つが、ひたりと動きを止めた。  二つの金の輝きが、こちらに向けられた。  吸血の双眸だった。 「敵襲!敵襲っ!」  次々に声が上がったのは、悲鳴と同時だった。 「あいつ…!」  予感と同時に外を見る。それは的中し、既に銀の獣は自制心を失くした凶獣となっていた。  闇の中、次々に、赤い飛沫が上がっていく。  月が、静かに照らしていた。  ディーグは、剣を手に取った。  決行は、今晩しか無い。  むしろ、それを望んで、『これ』は仕組まれているかも知れなかった。  回廊に出たディーグは、目を閉じ大きく息を吐いた。  香は、やはり漂っていた。

ともだちにシェアしよう!