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身体だけ!?(2)
ドッドッドッ と心臓が波打っている。
このまま快楽に身を委ねて…いやいやいや、ダメだダメだ!
僅かに理性が勝ち、指を引き抜く。
「はぁ…」
足元には、排水溝に流れ切れないボディソープの泡で埋め尽くされていた。
のろのろとシャワーヘッドを掴むと、身体に流しかける。
胸元を見てギョッとした。
幾つもの赤い斑点が散らばっていたのだ。
「これって…キスマーク!?」
ハジメテ見た。これも“ハジメテ”だ。
いやちょっと待て。キスマークって、恋人が独占欲剥き出しで付けるもんじゃないのか?
俺達はそんな関係じゃないのに、何で付けてるんだ?
…時々ワイシャツの首元スレスレに、檸檬君の頸に付いてることがあるけど。
あー、昨夜もヤったんかい!って突っ込み入れそうになるんだけど。
あれ、本人は絶対に気付いていないと思う。
頸なんて鏡で見ないもんな。
あれ、カットに行った時、めっちゃ気不味いじゃん!
あのひと、一体何考えてるんだろう。
相手は誰でもいいってことか?
『身体の相性がいい!』って、今までどれだけの相手をして、誰と比べてんの?
冗談じゃない!
考えていたら段々腹が立ってきた。
それにしても…もしナカで出されてたなら、アレが出てきても良さそうなんだけど…出てこないってことは…あぁ、用意周到スキンを付けてたのか。
あーっ、自分が情けない。
酒に酔った挙句に守ってきた…ん?守ってきたよな、確かに。
俺の“ハジメテ”を自分で捨てちまうなんて。
これ、満にバレたら大騒動になるよな。
相手は会社関係、それも社長だぞ!?
…何て男に手を出してしまったんだろう…
『また連絡する』って…もう、完全にセフレじゃん!
もし無視したら、あのレコーダーが……
あああーーーーーーっ!!!
俺の馬鹿ぁーーーーーっ!!!
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