12 / 174

身体だけ!?(4)

バレないように平静を装い、“通常通り”に仕事をこなした。 その日の業務も目処が立ったまさにその時、受付から内線が掛かってきた。 「黒原さんにお届け物です。」 「は?私にですか?」 首を捻りながら受け取りに行く。 一体誰からなんだろう。 時々いるのだ。俺に媚を売れば社長に便宜を図ってもらえると勘違いする輩が。 暗に社長への付届けの類なら突き返す。 俺を確認した受付嬢が怪訝な顔をしている。 「こちらです。」 その目の前には豪華な花束を抱えた男が1人。 確か彼は…ニールの偏食秘書!何で彼が!? 俺の腕を取ると、受付から少し離れた所へ連れて行き、俺だけに聞こえるように囁いた。 「いつもお世話になります。 うちの社長から黒原様へ言付かって参りました。」 そう言うと、ぐいっと問答無用で俺にソレを押し付けた。 「えっ!?あの、これは?」 「何も仰らずにお受け取り下さい。 拒否されると変に勘繰られます。 さ、どうぞ。」 確かにそうだ。 『社長じゃなくて何で黒原さんなの?この人誰?』 ちらちらと視線を泳がせてくる受付嬢の無言の問い掛けが怖い。 俺に花束を押し付け、失礼します、と去って行くその後ろ姿に、あくまでも業務の一環だと思わせるように軽く一礼すると、物言いたげな受付嬢に営業スマイルを残して急いでエレベーターに向かう。 それにしても。 コレは一体何だ!?何の意味があって? ふと覗き込んだ真っ白な薔薇の隙間に、メッセージカードがあった。 そっとそれを抜いて、封を開け中身を取り出した。 『美味しいワインが手に入ったんだ。 金曜日、迎えに行く。』 流れるような美しい筆跡は、確かにニールの直筆だった。 ワイン? 金曜日? 迎え? 頭沸いてんのか、アイツは。 ヤろうってか!?マジでセフレだと思ってんのか!? 会社に届けたら、俺が絶対受け取らざるを得ないことを踏んでのことか。 それにまんまと引っ掛かる俺も俺だ。 それなのに、ドキドキと跳ねる心音に戸惑っている。

ともだちにシェアしよう!