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身体だけ!?(5)
しかしまぁ、何で白い薔薇なんだ!?
赤なら『愛しています』とか『情熱』だったよな、確か。
白い薔薇の花言葉って何だったっけ…
受け取っちゃったよ。これ見た満や檸檬君から何を言われるやら…それ考えただけで疲れる。
上昇するエレベーターの浮遊感に頭と身体がついていかず、貧血みたいな感じになった。
おい、しっかりしろよ俊樹。
自分を鼓舞してみたものの、ため息をつきながら部屋に戻ると、檸檬君が大きな目を更に大きくして飛んできた。
「うわっ、凄っ。豪華!綺麗…黒原さん、それどうしたんですか!?
まさか、社長宛!?」
「…いやいや、そうじゃない。心配しないで…」
「おっ、えらく豪華な花束だな。
俊樹、それ誰から?俺に、じゃないだろ?
真っ白な薔薇…へぇ……ふーん…」
満は思わせぶりに言葉を濁して、ニヤリと笑った。何だ?何が言いたい?
「…違いますよ。」
そんな満を一瞥して、持ち帰る気力もなかった俺はひと言だけ返し、花瓶にそれを生け替えた。
ぶわりと濃厚な香りが部屋に広がった。
「さーて、仕事、仕事。」
物言いたげな2人の視線を無視して、パソコンのキーを叩き始める。
あのニールのことだ。何かメッセージがあるはず。
仕事のフリをして、そっとググってみた。
(白い薔薇の花言葉、っと……え、何コレ…)
『純潔』
『私はあなたにふさわしい』
『深い尊敬』
『清純』
読んでいるうちに、青かった顔が怒りで熱を持ってきた。
「あんのクソ野郎っ!」
「え!?黒原さん、どうかされましたか!?」
心の声が思わず出てしまったらしい。
「いやいや檸檬君、何でもないよ。」
引き攣った笑みを返しながら、ぎりぎりと握る拳に力が入る。
『純潔』…純潔だとぉ!?ふざけんな!
ハッ…もしや満はこの意味を知って…
顔を上げたその時には、もう満の姿は社長室に消えていた。
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