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身体だけ!?(8)
恋したって結ばれない。それなのにセフレとして抱かれろと言うアイツ。
あのレコーダーがある限りはアイツの言いなりにならなくちゃいけないのか?
万が一アレが世に出れば、あらゆる所に迷惑が掛かる。俺のことは構わない。俺はどうなってもいいけれど。
何という失態。何という恥。
自分が蒔いた種だ。責任は取らなければ。
ため息をついてのろのろとスーツを脱ぎ始めた。
胸元につけられたキスマークは、もう殆ど消えていた。
「俺、これからどうなるんだろ…」
思わず口から出た言葉に狼狽えながらも、意を決して全てを脱ぐと、ドアを開けた。
「…逆上せる…疲れた…」
自分で解すなんて難度高過ぎる。
体操みたいに『最高◯難度のナントカカントカ!』って名前が付く勢いだよ、コレ。
それだけで体力も気力も使い果たした。
「檸檬君、いつもどうしてるんだろう…」
まさか、まさかこんなこと、聞けないけれど。
誰かに直接聞きたい。
ううっ… 実践しないとYouTubeなんかじゃ分かんねぇよ。
疲れ果ててへろへろになりながらも髪をがしがし拭いていると
バァーーーーーン
「俊樹っ!大丈夫かっ!?」
腰にタオル1枚巻いて突っ立ってる俺の元に、血相を変えたニールが飛んで来た。
フリーズ……固まる俺の身体をニールはあちこち確かめる。
「…ニール…どうしたんですか?何か?」
「…いや、あまりに出て来るのが遅いから…中で倒れてるのかって心配になって…
っていうか、敬語禁止って言ったじゃないかっ!」
「あ…ごめん、大丈夫、だ。
着替えたら手伝うから…あっちで待っててくれ。」
「あ、うん…大丈夫ならいいんだ。」
そう言いながら俺を見つめるニールの視線が…何故か熱いような気がする。
そう、“気がする”だけ。
…そうだよな、俺が倒れたら今夜使いものにならなくなるからな。
俺は、ふいっ、と視線を逸らすと、背中を向けてドライヤーを当て始めた。
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