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身体だけ!?(10)
「だって自宅だと拒否されるに決まってるじゃないか!だからうちの吉川 に頼んで、会社に持って行かせたんだ。
薔薇の色は…別に他意はないよ。
君に似合うと思ったから送っただけだ。」
衒 うことなく素直にそう言われたら反論できなくなった。
「…とにかく…今回はお礼を言うよ。ありがとう。
次からはこんなことしないでくれ。
花を貰う意味がないし。こんな豪華な食事もそうだ。
…だって…俺達は」
「俊樹、料理が冷めてしまう。
君のお小言は今度ゆっくり聞くよ。
今夜は、俺の腕前を楽しんでくれ。」
紡ぐ言葉を遮られ一方的に、乾杯、とグラスを重ねられ、慌てて俺もひと口含んだ。
芳醇な香りと、それでいてフルーティで軽やかな液体が、少し喉を焼いて胃に収まった。
「…美味しい…」
「だろ?君と飲みたかったんだ。さ、自慢の料理も食べてくれよ。」
ニールに見つめられ微笑まれると、俺は勘違いしそうになる。
俺達は…恋人ではない。
それはちゃんと弁 えなければ。
心を寄せたひとに、例えひと時でも求められたら…それでもいい…と思う。
いつ捨てられるのか分からないが、この男が俺に飽きない限りは有効だ。
ニールが自慢するだけあって、料理もとても美味かった。
「社長を辞めてレストランでも始めたらどうだ?」
と揶揄ってやると
「俊樹が毎日来てくれるなら考えてもいいぞ。」
なんて返してくる。
本当にひとを煽るのが上手い。
普通ならその気になってしまうだろう。
たわいもない話をしつつ、皿の上の料理がどんどん口に吸い込まれていく。
美味くてあっという間に空になった。
「はぁ…マジで美味かった…ニール、ご馳走様。ありがとう。」
「喜んでもらえたなら良かったよ。
腕を振るった甲斐があった。」
爽やかスマイルにドキドキしてしまう。
少し赤く染まった顔を隠すように提案した。
「片付けは俺がするよ。
美味いもの食べさせてもらったお礼だ。」
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