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困惑(2)
夜通しのセックスなんて、カロリー消費が半端ないんだろうか。
何分、経験がないから分からない。
昨夜、たらふくあんなに美味い料理を食べたというのに、もうお腹が空いている。
あれだけ搾り取られたら無理もないか。
「冷蔵庫に何かあるかな。」
他人 ん家 の冷蔵庫を勝手に開けることに気が咎めたが、ニールのことだ、そんなことには目くじらを立てたりしないだろう。
テーブルにはまるで準備されたように食パンが。おおっ、専門店の高級なやつじゃん。
卵にスライスハム、とろけるチーズに…
野菜室にはちゃんとフリルレタスやトマトなんかもあった。
「…ちゃんと自炊してるんだな。」
自分ん家でするように、朝食の用意を始めた。
何ともシンプルで分かりやすい収納と道具類のお陰で、惑うことなく支度ができた。
きっと、あの男は几帳面なんだろう。
あとはコーヒーをセットして…という段になって、ガチャリとドアの開く音がして、この部屋の主がお出ましになった。
「…俊樹、おはよう…何でベッドにいないの?」
「おはよう、ニール。シャワーを浴びたくて。
ついでに勝手に冷蔵庫漁って作った。
ごめん。」
「あぁ、いい匂いがすると思ったら…ありがとう。
俺が作ってやろうと思ってたのに。
お腹空いた。食べてもいい?」
「あぁ、勿論。あとはコーヒーだけだ。パンの焼き方のお好みは?」
「コーヒーは俺がしよう。
パンは切り目を入れて、そこにバターを乗せて焦げ目がつく程に。よろしく。」
「分かった。」
ん?ちょっと待てよ。これは、これはまるで…
俺の戸惑いを他所に、コーヒーのいい香りとパンの焼ける香ばしい匂いがミックスしている。
まるで恋人同士の事後の朝のような…違和感のない会話に、俺は困惑していた。
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