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困惑(3)
俺のそんな気持ちに気付かないのか、ニールはご機嫌でパンを頬張っている。
「ふまい !」
「…焼いただけなんだけど。」
「(むぐむぐ)…俊樹、お前も自炊するんだな。」
「あぁ。ひと通り何でもできるように躾けられてきたから…」
「それは“お目付役”としてか?」
「え?」
「また気を悪くしたらすまない…満のためか?」
「…結果的には俺自身の役に立ってるから、半分YESだな。」
「そうか…もういい加減、その目付役は卒業したらどうだ?
アイツにも伴侶殿ができたし、自立するいい機会じゃないのか?」
何が言いたい?
満に対して過保護だとでも言いたいのか?
それとも金山家に対する難癖か?
ニールの真意を図りかねて黙っていると
「『家』の事情に突っ込みすぎた。
出過ぎた真似をして済まない。」
と殊勝にも謝ってきた。
前回の俺の態度を思い出したのだろう。
「ただ…俊樹はもっと自由になればいいと思っただけだ。」
自由?俺はやりたいようにやっているぞ。
俺の何が不自由だと思ってるんだ?
俺が縛られている、そう見えるんだろうか。
「…側から見たら…満に…本家に縛られてる…そんな風に見えるのか?」
「いや…俊樹は実直で忠実で真面目過ぎて…
もっと肩の力を抜けばいいと思ったんだ。
他意はない。気にしないでくれ。」
それだけを言うと、ニールはレタスをバリバリと食べ始めた。
もうそれ以上は口にしないと、暗に話を切ったように見えた。
だから、俺もそれ以上は何も考えず答えずに、ひたすら口を動かした。
よく考えたら…今の状況って、変だよな。
俺とニールはただの身体の関係。それなのに朝まで過ごして(というより抱き潰されて)、俺が朝食を作って一緒に食べている。
「俊樹、今日の予定は?」
ニールが突然問い掛けてきた。
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