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困惑(5)
そうやってニールに揶揄われながらも、俺は無言で洗濯機をフル稼働させ、その間に掃除機をかけ、玄関も雑巾掛けをしてピカピカにしてやった。
何かして動いていないと、気持ちが漏れ出しそうで怖かったからだ。
ニールは俺の後を子犬よろしく着いてくる。
おいおい、俺はセフレの家で何やってんだ?
これじゃあまるで、恋人のすることじゃないのか?
何だかムカついてきた。
「ニール、お前ん家だろ?
いつも自分でやってんだろ?俺にやらせずに自分でも掃除しろよ!」
「へへっ、いいじゃん。
俊樹は本当に何でもできるんだな。
俺がするより綺麗になるから、任せたよ!」
ニールは嬉しそうに破顔している。
かわいいしカッコいい…ダメだ。マズい。
俺はこの男に惚れてしまっている。
……あ、違うか。セフレ兼家政夫。
そうか、そういうことか。
それならば合点がいく。俺は便利屋か…
きゅうっ、と胸が痛む。
惚れた相手にいいように扱われて、それでも嬉しいと思うなんて。
これって愛人の考え方ではないのか?
こんな関係、早く切らなければ。
俺が深みにハマる前に。
でも、ニールの手元にはあのボイレコがある。
俺の馬鹿。油断大敵という言葉の意味を噛み締める。
どうすれば消去してもらえるのか。
泥棒のような真似事はできないし。正攻法でいっても笑われるだけだろうか。
「俊樹?」
「うわぁっ!」
動きの止まった俺の目の前に、ニールの顔があった。
「吃驚した…」
「こっちのセリフだよ!文句言ったかと思ったら、フリーズして視線が動かなくなったから、どうかしたのかと…大丈夫か?
…調子に乗って無理させ過ぎた。ごめん。」
「…いや、別に。」
ニールは俺の手から雑巾を取り上げると、洗面所に連れて行き、手を洗うように促した。
俺はそれ以上文句を言ったり抗ったりする気にもなれず、手を洗った。
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