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困惑(9)
「俊樹…君、天然?」
「はぁ!?ニールに言われたくないんだけど。」
「はっきり言わせてもらうけど。
俊樹、自分がどんだけモテるか知らないんだろ!?
俺の会社でも男女問わず、狙っている奴は大勢いるんだ。満が結婚したから自然とターゲットはお前に絞られる…もっと自覚したほうがいい。
余り無防備だと襲われるぞ。」
「…ニール…買い被り過ぎ。
お前みたいなイケメン社長の顔面偏差値に免疫のある社員が、俺なんかに興味を持つ訳ないだろ!?
はい、この話はお終い。俺、受付に名前書いてくるわ。」
今日のニールは一体どうしたんだ?
俺を甘やかそうとしたり、褒めちぎったり。
まぁ、いいや。考えないようにしよう。
首を捻りながらニールの所に戻ろうとしたら、既に女性に囲まれていた。
チッ
思わず出た舌打ちに自分で驚きながらも足を向けると、ニールが俺に気付いた。
そして取り巻く女性達に笑顔で告げた。
「悪いけど、俺さっきから断ってるんだけど。君達、しつこ過ぎる。
プライベートを満喫してるから俺達に構わないでくれる?
そうやって囲まれるの、不愉快なんだ。」
口元は笑っているけど目が怖い。ぴきりと凍った空気が漂った。
そこそこにかわいい子達だったからニールに相手にされる自信があったんだろう。女性達はそこまでハッキリと断られると思っていなかったのか、しどろもどろになりながら離れて行った。
「おい、ニール。あんな言い方して良かったのか?」
「馬鹿な女にはハッキリ言わないと分からない。俺は俊樹とランチを楽しみに来てるんだから、あんなのは不愉快だ。」
「でもお前、万が一SNSで拡散でもされたら」
「STOP!大丈夫だ。こんなことくらい俺は何とも思わない。
それに見ろよ。アイツら男連れだぜ。」
指差す方を見ると、冴えない男達と並んでいた。
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