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すれ違い(4)

洗面所で、久し振りにマジマジと自分の顔を見た。 「あー…ホントだ…」 俺は元々肉がつきにくいタチなのか、ただでさえ細い輪郭が、頬骨が浮き出るように削げ落ちて益々細くなっている。 心なしか色艶も悪い。 目の下にはクマすらできていた。 「悲惨だな、これ。檸檬君が心配するはずだよ…」 誰もいないのをいいことに、独り言ちた。 最近、鏡もあんまり見てなかった。 じっと見ていると、自分じゃないみたいで。 確認するように、思わず顎から頬を撫でてしまう。 薄い皮の下の骨にダイレクトに当たって、我ながらゾッとした。 一応、飯食ってるんだけどな。 一応、ベッドにも潜り込んでるんだけどな。 ただ、食欲が落ちて、眠れないだけ。 ふふっ 乾いた笑いが込み上げてくる。 情けないな、俊樹。 たかだかセフレ扱いされてるだけじゃんか。 それっくらいで、こんなにダメージ食らってんのか。 お前、結構女々しい男だったんだな。 「はぁっ…」 大きなため息をひとつ。 連れションなのか、こちらに向かってくるような複数の足音が聞こえ、慌ててその場を後にする。 出口で丁度鉢合わせしてしまった。 「おっ、黒原君、久し振り!」 「赤石部長、中原部長、お久し振りです。」 「社長はいい子にしてるかい?」 「ははっ、それなりに。」 「赤石っ、社長にそんな」 「こんなことで目くじら立てるような人じゃないからな。ね、黒原君。」 はぁ、とか、えぇ、とか曖昧な返事と営業スマイルでその場をやり過ごした。 赤石部長が俺の顔を見て何か言いかけたが、逃げるように立ち去った。 勘の鋭い彼のことだ。俺がやつれてるのに気が付いたんだろう。 満に余計なことを言わなければいいんだけど。 社長室に戻ると、満に呼び出された。 「黒原、明日から3日間出張を命じる。 行き先はここ。 食事は全てルームサービスを取ること。 クリーニングその他はフロントに任せろ。 費用は全額俺。 とにかく何もせずに休んでこい。 拒否なんかできないからな! 引き継ぎがあれば、今すぐ檸檬に伝えろ。 以上!」

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