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すれ違い(5)
「社長、待って下さい!
休みを強要される程、私は体調を崩したりなんかしていませんよ!?
撤回して下さい!」
満は俺の顔をじっと見つめると
「俊樹…俺が何も気付いてないと思ってたのか?
ニールと…何かあったんだろ?」
身体が硬直した。
バレた。マズい、どうしよう。
何か言わなければ。
気持ちは焦るのに、喉がくっ付いて、言葉を発することができない。
目を見開いたまま、満を見つめ返す。
声を出せ。このままだと認めてしまうことになる。
満が静かに口を開いた。
「言いたくないことなら無理には聞かない。
…恋愛は自由だ。相手が誰であろうとも、どんな立場でも関係ない。
だけど。
家族同様のお前が苦しんでやつれていく姿を見るに忍びないんだ。
何も考えるなとは言わない。
せめて数日間だけでもゆっくり身体を休めてくれ。」
思いがけない満の言葉に、涙腺が緩んでしまった。
ぽろっ
しまった!
慌てて頬を拭ったが遅かった。
決壊した涙腺は、ぽろぽろと止めどなく涙を溢れさせる。
「ぐっ…」
「俊樹、俺はお前に幸せになってほしい。
お前が俺達にしてくれたように、俺もお前の力になりたいんだ。
お前のことを心配するのは許せ。
言いたくないことなら言わなくてもいい。
話したくなったら話せ。
…俊樹、もっと甘えろよ。」
ダメだ。
涙が止まらない。
俺のことをそんな風に思ってくれてたのか。
声を忍んで泣く俺の肩を満はポンポンと叩くと、そっとティッシュの箱を押し付けてきた。
「少し落ち着くまでここにいろ。
何かあれば檸檬が対処してくれるから気にするな。
…しかし…お前達ややこしい恋愛をするなぁ…」
何と答えていいかも分からず、黙って流れる涙を押さえていた。
これは…満の独断だけでなく、檸檬君から話がいってるな。
あの子の性格では黙って見過ごすことができなくて、満に相談したのだろう。
このままでは皆んなに迷惑が掛かる。
しっかりしなければ。
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