40 / 174
出張(1)
いつもの時間に目覚ましが鳴った。
がばりと起きて、洗面を済ませた後、はっと気付く。
「…今日から休みだった…」
檸檬君が気を利かせ、それプラス前々から俺の不調に気付いていた満から、『出張』を命じられた。
出張という名の骨休めホテル監禁。
チェックインは14時だから慌てる必要もない。それまではのんびり過ごすことにする。
平日のウインドウショッピングでもいいな。
そうだ。
目が覚めてしまったし、モーニングでも作ってみようか。
キッチンに行き、冷蔵庫を漁ってみる。
必要な物は大体揃っている。
冷凍のパンケーキもあったはずだ。
今朝はブラックじゃなくてカフェオレにしてみよう。
「…『何もするな』と言われたんだけどさ。」
テレビをつけると、いつものお天気お姉さんが
「今日は一日快晴です!」と満面の笑みを浮かべていた。
「天気か…洗濯していこうかな。」
シーツもベッドカバーも全て取り外して、洗濯機に放り込んだ。
晴れ渡る青い空。
涼やかな風。鳥の囀りも近い。
今から登校するんだろう、小学生の弾んだ声が微かに聞こえる。
平日のこんな時間にのんびりするなんて、何年ぶりだろうか。
ベランダからぼんやりと外を眺めていた。
俺に必要なのは、こんな時間だったのかもな。
ちょっとセンチな気持ちを遮ったのは、腹の虫だった。
「どんなに悩んでても、一応腹は減るんだよな。」
何だかおかしくなってひとりで笑い、手を洗うと野菜室からトマトときゅうりとリーフレタスを取り出した。
ざっと洗ってサラダにすると、今度はパンケーキをレンチンする。
コーヒーを少し濃い目にセットして、あとはスクランブルエッグを作れば出来上がりだ。
いつもより時間を掛けて、ゆっくりと咀嚼する。完食できた。
ここ最近で久し振りだった。
ともだちにシェアしよう!