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出張(2)
干したシーツが揺らめくのをただぼんやりと眺めている。
ほんの少し、ニールの顔が浮かんだけれど、その残像を頭から追いやって考えないように努める。
初めての本気の恋は、実らずに散っていく。
もっと満みたいに遊んでおけば良かったな。
そうすれば“本当の相手”が現れた時に、それが正しいかどうかの判断ができたかもしれない。
でも、持って生まれた性格と、幼い頃からの目付役としての教育は、それを許さなかった。
それが間違っていたか、と問われても、今の俺には分からない。
ただ、自分の辿ってきた人生を否定することはしたくない。
置かれたレールの上を歩んできたかもしれないが、俺にとっては自分の意思で生きてきたと胸を張って言いたいから。
いつの間にか、うとうとしていたみたいだ。
気が付くと、時計の針は12時少し前を指していた。
風も程よく吹いていたせいか、大物のシーツはもう乾いていた。
取り込んでベッドメイクを終えると、掃除機を掛けた。
朝目一杯食べたせいか、ほぼお腹も空いてない。このまま昼抜きで出掛けるとしようかな。晩飯を少し早めに食べればいいし。
満が『ルームサービスを頼め』と言っていたし、どうせ満のポケットマネーなら甘えて散財してやろう。
黒原、お主もワルよのぉ。
ざっと部屋を片付けて、キャリーバッグに着替えを詰め込み、パソコンは…うん、置いていこう。
野郎の独り暮らしとはいえ、俺は自分で言うのも何だけどマメで綺麗好きな方だ。
散らかす奴もいないし、リモコンなんかもいつもと位置がズレるだけでザワっとする。
…だから他人と暮らすのなんて無理だ。
それは自分でも理解している。
部屋の模様替えをしてもいいな。
雑貨屋へ行ってみようか。気分転換も必要だ。
キャリーバッグは…コインロッカーにでも放り込んでおこう。
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