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出張(3)
ガラガラとケースを引っ張りながら駐車場に向かう途中で、管理員さんに出くわした。
「こんにちは。行ってらっしゃいませ。」
「こんにちは。
あ、大久保さん、今度粗大ゴミ出すかもなので、はっきり決まったらお知らせしますね。」
「はい、承知しました。私が不在でしたらメモ入れておいて下さいね。」
「はい、よろしくお願いします。行ってきます!」
大久保さんは初老の男性で、余計なことは言わない詮索しない、個人情報をしっかり守ってくれる人だ。
流石に金山家の物件、雇う人選も抜群だ。
だから引っ越しもできないんだよなぁ。
もう、満には檸檬君という伴侶ができたから、俺が今までのように近くに居て、一々目を配る必要もなくなったんだけど。
何だか複雑な気持ちを抱えて、向かう先は大型家具雑貨量販店。
そこそこな値段で良い物が揃っている。見るだけでもワクワクしてきた。
うん、気分転換には最適だ。
「チェストも新しいのにしようかな。」
寝室のやつはもう学生時代から使っていて、結構ガタついて不便だった。
おっ、大きさも色もいい感じのやつがある!
これにしよう。
ついでに布団カバーもラグもカーテンも買ってしまえー!
食器は…あっ、これかわいいじゃん。
あははっ、楽しくなってきた。
結局…あれもこれもとカート1つでは足りずに、レジ横にキープさせてもらって、いざ支払いという段になり、慌てた。
「うわっ、予算オーバー…」
調子に乗って、まるで新生活を始めます的な買い物をしてしまった。
…不覚。俺らしくない浮つき方。
それでも平静を装って、全て配送を頼んだ。
これは引っ越し並みの廃棄だな。帰ったら大久保さんに収集日聞かなくちゃ。
散財したけれど、気分はちょっと晴れた気がする。
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