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出張(8)
ブブブッ ブブブッ ブブブッ
突然、無機質な音に起こされた。
酔った勢いで眠れていたのに。一体誰からの電話なんだろう。今何時なんだろうか。
まだ覚醒しない頭で、手探りで携帯を探すが見つからない。起き上がりながらベッドサイドの時計を見た。
21:15
何だよ。せっかく寝れてたのに。
ムッとしながら枕元を見て、携帯を見つけて手を伸ばす。
『N』
画面には、フルネームでは載せることのできないアルファベット1文字のみが表示されていた。
こんな日に。どうして。
出るのを躊躇していたら、呼び出し音は止まった。いつもなら満を通して連絡してくるのに。
今夜は直接誘いの電話だったんだろうか。
ドキドキが止まらない。
出れば良かったんだろうか。
画面に残った履歴をタップしようとして…止めた。
俺は3日間の『出張中』だ。
満からは『何もするな』と言われている。
ニールの呼び出しに応じれば、満と檸檬君の気遣いを裏切り、無駄にすることになる。
そうかと言って無視すれば、あのレコーダーが……
俺はため息をついて考えた挙句、ショートメールを打つことにした。
『申し訳ないが出張中だ。何もできない。』
間髪入れずに返信があった。
『いや、ただ声が聞きたかっただけだから。
忙しいのにすまなかった。』
これは…何だ?
俺は一読しただけでは理解ができなかった。
書いてあることはたったの2行なのに。
何度も読み返してみた。
“声を聞きたかっただけ”って、どういう意味なんだろう?
テレセでもするつもりだったのか?
分からない。意味が分からない。
その2行に対する返事を打ちあぐねて、結局そのまま放置してしまった。
その後、いくら待っても着信はなかった。
すっかり目が冴えてしまった俺は、もう一度布団に潜ったものの、一睡も出来ずに朝を迎えた。
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