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出張(9)

まんじりともせずに朝を迎えてしまった。 ニールの馬鹿野郎。 お前の変な電話とメールのせいで、俺の安眠が妨害されたじゃないか。 あれは一体何だったんだろうか。 …面倒だ。考えるのは止めよう。 ムカムカしながらテレビをつけた。 いつもの時間、いつもの番組。 体内時計はしっかりと機能している。 俺には『のんびりまったり』という言葉は存在しないのかもしれない。 こんな時くらい朝寝したかったのに。 アイツのせいで台無しだ。 あと20分したら支度して、モーニングでも食べに行ってこようか。 和食か、それとも洋食か。 誰かに用意してもらう食事もいいな。 ふと、ニールが作ってくれた朝食が頭に浮かんだ。 くそっ。何であの時のことを。 俺はアホか。 忘れろ、今は思い出すな。 ああっ、あの微笑みも忘れろ。 ぶんぶん頭を振って振り払おうとしても、ニールの笑顔が纏わり付く。 はぁ…最悪…重症だ… 拗れた初恋はタチが悪い。 ふぅ、やっぱり着替えて朝食にしよう。 ここにいたら逆に考え過ぎる。 歯磨きをして着替えを済ませると、2Fのレストランに向かった。 程々に埋まった客席の、2人掛け用の席に案内され、トレイを持ちざっと盛られた料理を見渡す。 決まり。洋食だ。 白い皿を取り、サラダを少量盛り付ける。 出来立てのオムレツを乗せてもらい、焼き上がったばかりのクロワッサンとロールパンをトングで取り分け、ポタージュを半分カップに注ぐ。 仕上げはホットコーヒーと、グレープフルーツジュースをグラスに入れて、席に戻った。 一仕事終えた気分でトレイに目を遣ると、フルーツを取り忘れたことに気付いた。 まぁ、あとでいいや。 仕事を離れたせいもあるのか、昨日気晴らしで散財したせいもあるのか、少し戻ってきた食欲に安堵していた。 ゆったりと口を動かし、全ての皿を空にした俺は、フルーツを取りに席を立った。

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