48 / 174
出張(9)
まんじりともせずに朝を迎えてしまった。
ニールの馬鹿野郎。
お前の変な電話とメールのせいで、俺の安眠が妨害されたじゃないか。
あれは一体何だったんだろうか。
…面倒だ。考えるのは止めよう。
ムカムカしながらテレビをつけた。
いつもの時間、いつもの番組。
体内時計はしっかりと機能している。
俺には『のんびりまったり』という言葉は存在しないのかもしれない。
こんな時くらい朝寝したかったのに。
アイツのせいで台無しだ。
あと20分したら支度して、モーニングでも食べに行ってこようか。
和食か、それとも洋食か。
誰かに用意してもらう食事もいいな。
ふと、ニールが作ってくれた朝食が頭に浮かんだ。
くそっ。何であの時のことを。
俺はアホか。
忘れろ、今は思い出すな。
ああっ、あの微笑みも忘れろ。
ぶんぶん頭を振って振り払おうとしても、ニールの笑顔が纏わり付く。
はぁ…最悪…重症だ…
拗れた初恋はタチが悪い。
ふぅ、やっぱり着替えて朝食にしよう。
ここにいたら逆に考え過ぎる。
歯磨きをして着替えを済ませると、2Fのレストランに向かった。
程々に埋まった客席の、2人掛け用の席に案内され、トレイを持ちざっと盛られた料理を見渡す。
決まり。洋食だ。
白い皿を取り、サラダを少量盛り付ける。
出来立てのオムレツを乗せてもらい、焼き上がったばかりのクロワッサンとロールパンをトングで取り分け、ポタージュを半分カップに注ぐ。
仕上げはホットコーヒーと、グレープフルーツジュースをグラスに入れて、席に戻った。
一仕事終えた気分でトレイに目を遣ると、フルーツを取り忘れたことに気付いた。
まぁ、あとでいいや。
仕事を離れたせいもあるのか、昨日気晴らしで散財したせいもあるのか、少し戻ってきた食欲に安堵していた。
ゆったりと口を動かし、全ての皿を空にした俺は、フルーツを取りに席を立った。
ともだちにシェアしよう!