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出張(10)
「はぁ、食った、食った…」
独り言を言いながら部屋に戻ると、ベッドに大の字に寝そべった。
満腹って幸せなんだなぁ。
膨れたお腹を摩りながら目を閉じた。
お腹が膨れたら何だか眠くなってきた…あー…そうだ、このまま寝ちゃいけない。エステの予約が入ってたんだ… ギリギリまで眠ろう。
夕べ寝てないもんな。眠いはずだ。
着ていた物を脱ぎハンガーに掛けてから、携帯を手に取ると10:20にアラームをかけた。
あれから画面には何の表示もない。
大きく息を吐くと、まだ少し温もりの残った布団に潜り込んだ。
あー、何か非日常的で落ち着かない。
けど、身体は正直だ。
瞼が段々落ちてくる。
遂に睡魔に負けて、俺はうとうとと眠りの世界に導かれていった。
ピピピッ ピピピッ ピピピッ
突然のアラーム音に飛び起きた。
見慣れない寝具、見慣れない部屋。
一瞬、ギョッとするが…あ…ここ、ホテルだ。
アラームを止めて、瞬きを繰り返す。
変な時間に横になったからか、身体が怠いし頭も重い。
エステ…面倒だな。このまま横になっていたい。
でも、せっかくの満の好意を無駄にしたくはないし。
横になってればいいだけの話だ。覚悟を決めて行ってこようか。
ノロノロと起き上がり、着替えを済ませる。
一応、もう一度洗面を済ませた。
昨日までよりは少しマシな面 が鏡に映っていた。
ドキドキしながら予約の時間より5分前に店に入ると笑顔で迎えられ、言われるがまま肩の出るローブのようなものに着替えた。
客は俺ひとり。
スタッフは女性ばかりで緊張した。
ましてやこんな店、初めてだ。
質問に対しては「はい」か「いいえ」「そうですね」しか言わない俺に、彼女達にも俺の緊張は伝わってたんだろう、必要最低限の会話のみで事足りた。
店内はゆったりとしたヒーリングの曲が流れて、アロマのいい香りに包まれ、俺は施術が始まると同時に爆睡していたようだった。
「…様、黒原様…」
「…ん…あと5分……って、ええっ!?」
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