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出張(13)

のし掛かられるようにシートベルトを装着され、逃げられなくなった。 急発進する車に揺られ、今、何が起こってるのか理解できない。 ニールは高速のゲートを通過した。何処に行こうとしてるんだ!? その横顔は、俺が声を掛けるのを全拒否していた。 俺もそれを見て、今は何を言っても無駄だと悟った。 車が流れに乗り速度が安定した頃、俺はやっとのことで口を開いた。 「戻ってくれ。俺は出張中で都内のホテルから離れられないんだ。 今はお前の道楽に付き合えない。」 「あんな顔を見せられたら戻す訳にはいかない。 まさか…変な接待でもさせられてるんじゃないだろうな?」 「はぁ!?そんな訳ないだろ!?お前が言うなよ! とにかく戻ってくれ!満達に迷惑をかける訳にはいかないんだ!」 「…分かった。次で降りる。」 それからは無言だった。 ニールは何をしたかったんだろう。 それに、夕べの電話は何だったのか。 聞きたくても聞けない。もどかしい時間が過ぎて行く。 そして車は高速を降りた。 「何処まで送ればいいんだ?」 「何処でもいい。適当に降ろしてくれ。」 「そんな訳にはいかない。 俺が勝手に拉致してきたんだから。 そうだ!晩飯一緒に食べよう。ここからすぐの所に美味い海鮮丼の店があるんだ。それから送って行くよ。 頼む、付き合ってくれ。俺、昼抜きだから腹が減って倒れそうなんだ。」 俺が黙っていると、ニールはそれを諾と受け取ったのか、右折のラインに入った。 お互いに無言で、気不味い雰囲気のまま車は走り、暫くして目当ての店に着いたようだった。 何で俺はニールと一緒にいるんだろう。 何処をどう間違って遭遇してしまったんだろう。 運命の悪戯を呪いながら、ニールの後に続いて店の暖簾をくぐった。

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