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出張(14)

開店したてでまだ空席が目立つ店内は、それでも活気があった。 2人とも大将オススメの『十種乗せ満腹丼』を選び、俺はご飯少なめで注文した。 ニールが絶賛しただけあって、地元の港で上がった魚をふんだんに使った海鮮丼は、ボリューミィでご飯を減らして正解だった。新鮮で本当に美味かった。 取り立てて話すこともなく、というより、話す気にもなれず、無言で丼を空にした。 ふぅ、美味かった。今までの食欲不信は少しずつだが解消されている。 『自分の分は自分で払う』と言ったのだが、ニールは『誘ったのは自分だから』とガンとして譲らず、根負けして支払いを任せた。 「ご馳走様。最寄駅でいいから降ろしてくれ。」 「そんなことはできない。ホテルまで送る。」 そんなやり取りを数度繰り返し、ここでも結局根負けしてホテルの近くまで送ってもらうことになってしまった。 夕暮れの街にあかりが灯り始め、茜色と群青色のグラデーションが美しく重なっている。 もうすぐ都会の空に隠れた星が瞬き、夜の帳が下りる頃だ。 先に口を開いたのはニールだった。 「俊樹、このまま俺の家に来てくれないか? 絶対に手は出さないから。」 「だから、俺は今出張」 「分かっている。君に触れたりはしない。 業務に差し支えないように、明日の朝にはホテルに送る。 だから、家に来て欲しい。」 「目的でないなら、どういう意味だ?」 「着いたら話す。とにかく来て欲しい。 お前と話がしたい。」 「話すことなど何もないはずだ。 話したいなら今話してくれ。 俺がお前の家に行く必要などない。」 「運転しながらじゃ、話ができない。」 「なら、車を停めろよ!」 語気荒く叫ぶと、ニールはすぐにウインカーを上げ、コンビニの駐車場に入った。

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