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出張(15)

半ば八つ当たりのような、我慢していたモノが、一気に噴き出した気がした。 自分でも抑えが効かなくて戸惑っている。 言い放った言葉は消えない。 心臓がドクドクと音を立てて跳ねている。 ニールは停車するとサイドブレーキを踏み、ふぅ、と大きく息を吐いた。 そして俺の方に身体を向けた。 「俊樹、落ち着け。どうしたんだ?」 その落ち着き払った態度が、俺の怒りに拍車を掛けた。 「『落ち着け』!?『どうした』!? 俺の方が聞きたいよっ! 夕べだってあんな電話掛けてくるし、今日だって何で出くわすんだ!? …もう俺に関わらないでくれ…、晒したければ晒すといい。 俺が金山から身を引けばいいだけの話だ。 最初からそうすれば良かったんだ。 そうすれば誰にも迷惑を掛けることもないし、俺も傷付いたりしなかったんだ!」 もう止まらない。 一度口火を切ったら溢れ出して止まらなかった。 最後の方は涙声になっていたけれど、そんなこともうどうでも良かった。 俺はそう言い放つと、シートベルトを外し飛び出した。 「とし」 慌てたようなニールの叫び声は、俺がドアを閉める音で途中で消えた。 クラクションを鳴らして威嚇する車を避けながら、一気に反対車線に渡り切ると、そのまま無我夢中で走った。 どのくらい走ったのか、息が切れ立ち止まった先にバスのターミナルが見えた。 上手い具合にタクシーが客待ちをしている。 息が整わぬまま先頭の車に近寄り窓ガラスを叩くと、開いたドアに滑り込み、ホテルの名前を告げた。 運転手が訝しそうにバックミラーで俺を見ている。 「これで足りますか?」 一万円札を2枚、防護スクリーンの間に差し込むと、『怪しい客』は『上客』に変わった。 背もたれに身体を預け、ぼんやりと窓ガラスを見つめる。 暗闇に反射して映る俺の顔は歪み、込み上げる嗚咽を奥歯を噛んで堪えていた。

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