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出張(17)
今日もまた、いつもの時間に目覚める。
アラームもいらない。
でも本当に、ぐっすりと眠れた。覚悟を決めたらこんなに違うのか。
さぁ、忙しい1日になるぞ。
新居を探して引越しをしなければならない。
まずそこからか。
仕事に関しては、マニュアルも作ってあるから引き継ぎなしでも檸檬君が上手くやってくれるはずだ。あの子なら問題ない。
とにかく身辺整理をしなければ。
おっとその前に朝ご飯に行くとしよう。
今日は…ほかほかの白ご飯の気分だ。
大皿にあれこれと小量ずつ取り分け、時間を掛けて食べ進める。
休暇と覚悟のお陰で、食欲も戻っていた。
そう、人間腹を括らねばならないのだ。
変な気合いに満たされて、調子に乗ってお代わりまでしてしまった。
ふう…食べ過ぎたかも…
ちょっと早いがチェックアウトして部屋の片付けをしよう。
不動産屋が開くのは9時半、ってとこか。
それまでに検索してある程度絞って…
あれこれ考えながらスーツケースに荷物を纏める。
ざっと部屋を見回して、汚れ物を纏めゴミを捨て、忘れ物がないかチェックする。
よし。行くか。俊樹、しっかりしろよ。
カードで支払いを済ませた。
ううっ、痛い出費だった。まぁ、体調もほぼ戻ったし、勉強代だと思えば許せる。
満達とバッティングしないように気を配りながらマンションのエレベーターに乗り込むと、ホッとした。
あの封書が届いたら、檸檬君は大騒ぎしそうだな。
立つ鳥後を濁しっ放し、だけど許してほしい。
数日振りの我が家は澱んだ空気で、俺はスーツケースを置くと窓を全開した。
朝の喧騒と新鮮な空気が流れ込んでくる。
ここでこうして過ごすのもあと少しか。
ちょっとセンチな気持ちになったものの、洗濯物を取り出し、ケースの中身を片付けて、俺の“出張”は終了した。
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