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包囲網(4)
やがて、絞り出すような小さな声が聞こえた。
「…俊樹…何故だ?何故?」
その目に見る間に涙が溢れてきた。
結構感情の起伏の激しい人なのかも。
本当に、本当に黒原さんのことを思ってくれているのか?
大切な人だ、と愛してくれているのか?
じゃあ、どうしてセフレだなんて言葉を使ったんだろう。
満さんが口を開いた。
「お前達、2人とも面倒臭いことするなよ。
ニール、本当に俊樹のことを愛してるのか?」
「さっきもそう言っただろ!?
どんなことがあっても、俺のモノにする!」
「じゃあ、最初からそう言えば良かったじゃないか。」
「…面目ない…」
「こんな物を送りつけてきたくらいだ。
アイツの性格じゃ、きっと身辺整理し始めてるはずだ。多分マンションも出て行くつもりだろう。
ニール。
『俺のモノにする」って言ったけど、本当に俊樹を守れるのか?
自分の立場や家族のこと、その他諸々の問題から、俊樹のことを最大限優先的に考えて、守り通せるのか?
…覚悟はあるんだろうな?」
「勿論だ!
帰国してあっちで籍を入れる。
そうすれば、戸籍上もちゃんと認められた夫夫 になれる。
… 俊樹の了解さえ得られれば、だけどな。」
「最初からそう伝えればいいものを…一目惚れだったんだろ?」
「…そうだ。一目惚れだよ。目の前に、天使が舞い降りたかと思った。
何とかして接触して振り向かせようと思ってたんだ…何であんなこと言ってしまったんだろう…バカだ、俺……」
「俊樹は、ああ見えて恋愛なんて経験のない初心な奴だからな。ハッキリ言って免疫がないんだよ。
お前みたいな海千山千の恋愛ハイスペックな奴に舐められまいとして、虚勢を張ったんだろう。
それに、代々俺の家に仕えてる家柄だ。責任感たるや半端じゃないんだ。」
重苦しい空気に包まれていた。
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