62 / 174
包囲網(6)
side:満
エンジンを吹かしながら、助手席に乗り込んできたニールを横目で睨み付けた。
「行くぞ。」
俊樹のマンション、もとい俺のマンションに着くまで、お互いに無言だった。
言いたいことは山程あったが、言い出したら止まらなくなる。
今は運転に集中したかった。
いくら用意周到、段取り魔の俊樹とはいえ、昨日の今日で新居を決め、引越しを済ませることはできないだろう。
確か保証人の要らない賃貸は、1〜2日審査に時間が掛かるはずだ。
いや、決まるまで何処かのホテルに身を隠すことも考えられる。
パソコンだって自宅に置いて行ってるはずだし、絶対に自宅に戻るはずだ。
駐車場に車をぶっ込み、ニールを連れて俊樹の部屋の階数ボタンと《閉》ボタンを連打する。
何度押しても同じなんだけど。
「…満…」
「何だ。」
「インターホン押しても居留守を使われたらどうするんだ。」
「心配要らない。
俺達はお互いに合鍵を持ってるからな。
出て来なければ押し入るだけさ。」
「!!!」
「何だよ…お前に何か言われる筋合いはないからな。」
無言のニールを無視してエレベーターを降りると、俊樹の部屋のインターホンを押した。
ピンポーン
ダイレクトの訪問なんて俺しかいないから。
いるなら早く出ろ。ばか俊樹。
ピンポーンピンポーンピンポーン
連打していると、観念したのかドアが開いた。
「…満…」
「やっぱりいたのか。入るぞ。」
俊樹は後に続く男を見て絶句した。
「…ニール、何で……」
「俊樹、話がある。」
俊樹は逃げられないと悟ったのか、はぁ、と大きなため息をついてくるりと後ろを向くと、部屋に入って行った。
俺達も続いて中へ入る。
「あ……」
ニールが立ち尽くした。
部屋の中はダンボールとゴミ袋の山になり、荷物が散乱していた。
ともだちにシェアしよう!