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包囲網(7)

俊樹が何をしたいのか、一目瞭然だった。 腹が立って腹が立って仕方がなかった。 「俊樹、あの『退職届』は何だ? あんなもの、一方的に送り付けてきてどういうつもりだ?」 俊樹は黙っている。 「お前はこんな非常識なことをする奴だとは、これっぽっちも思ってなかったんだけど。 ここを出て金山の後ろ盾から離れて、何処に行くつもりだ? 俺はお前の上司だという前に、幼馴染で家族以上の家族だと自負してきたんだが、お前はそうじゃなかったのか!? 俺は、お前にとって相談相手にもならない、そんな存在でしかなかったのか!? …おい、俊樹、答えろっ!」 悔しくて情けなくて、握った拳が震えてくる。 暫くの沈黙の後、俊樹がぼそりと呟いた。 「大切に…大切に思ってるからこそ、言えなかった…幸せな最中の満に、水を差すような余計な心配を掛けたくなかったんだ… それに、自分の気の緩みが招いたこと。 満には何の落ち度も関係もないからな。 非常識なことをしたのは重々承知の上。 それについては深く詫びをする。 檸檬君なら俺がいなくても、もう独り立ちしても大丈夫だ。それだけのことを教えてきてる。マニュアルだって作ってあるし、問題ない。」 「俊樹…」 何て事だ! そうだ、コイツはそういう性格だった…人のことを思うあまりに、自分を後回しにしてしまう。 我慢して我慢して、自分で何でも解決しようとして…… もう一度、俊樹に声を掛けようとしたその時、ニールが突然土下座をした。 驚いたのは俺達だ。 「へっ!?ニール?何やってんの?」 「ニール!?どうした!?」 「すまない、どれだけ謝っても謝りきれない。 許してもらえなくてもいい。でも、謝らせてくれ! 俺のせいで、こんなことになって…申し訳ないっ! 俺がきちんと自分の気持ちを伝えていれば、こんなことにはならなかったんだ! 俊樹、お前は俺のセフレなんかじゃないっ! 俺の変に捻くれたプライドのせいで、お前を苦しめてしまった…」 泣き声のニールが言葉を止めた。

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