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包囲網(8)

俊樹は、俺の前で『セフレ』と、改めて言葉に出されたことに動揺したのか、ニールと俺の顔を交互に見ながらアタフタしている。 「なっ、何を言ってるんだ!? あなたと俺は何の関係もないっ!」 ニールはそれに構わず、話し始めた。 「俊樹、俺の一目惚れだったんだ。 何とかして接点を持って仲良くなりたかった。 絶対に俺のモノにする、落としてみせる、そう決めて…お前を手に入れるために卑怯な手を使って、俺の言うことを聞かせるように仕向けたんだ… 素直に『愛してる』と言えば良かっただけの話なんだがな…本当に申し訳なかった。」 そう言って、また深々と頭を下げた。 そして、正座をすると叫んだ。 「俊樹、愛している! 俺と結婚して下さいっ!!!」 ニールの言葉を理解できてないのか、俊樹はその場にへたり込むと 「えっ!?嘘…ええっ……」 と言った後、動かない。 俺を無視して見つめ合う2人。そこだけ時間が止まっている。 理解していたとは言いながら、俺は、突然のニールの告白を黙って聞いているだけだった。 俺、何しにここに来たんだっけ。 で、超熱烈な愛の告白を一緒に聞かされてるって、場違いなお邪魔虫以外の何者でもない。 我に返り、そっと立ち上がった。 あの様子じゃ、きっと上手くいくだろう。 背中越しに、俊樹の涙声とそれを宥めるような優しいニールの声が重なって聞こえ、やがて聞こえなくなった。 俺は、音を立てないように玄関のドアをそっと閉めて鍵を掛けた。 さーて、仕事に戻るか。 午後から約束もあったしな。 ハラハラしながら待つ檸檬に、何か美味いものでも買って帰ろう。 道中の菓子店を幾つかピックアップし、檸檬の笑顔を思い浮かべながらエンジンを掛けた。

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