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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(1)

side:俊樹 何を言われたか理解できない。 目の前の男が何故土下座しているのかも分からない。 『謝る』 『セフレじゃない』 『一目惚れ』 『愛してる』 『結婚してくれ』 それらの言葉だけが、きちきちとパズルのピースのように繋がっていく。 まさか、ニールは、俺のことを…… そのまさかの答えに辿り着いた時、かくりと膝から力が抜けて、その場にへたり込んだ。 「えっ!?嘘…ええっ……」 座った俺と、目線が同じになった男の瞳を見つめる。 ニールは真剣に俺を見つめたままだ。 瞬きも忘れて見つめ合う。 あぁ…これ、マジなやつだ…この目は、嘘なんてついてない。 「…俊樹、愛しているんだ。」 それでもすぐには信じられなかった。 「だって!だって、お前は俺のことをセフレって言ったじゃないか! いつ!何処で!どうやったら、『愛してる』なんて言葉が出てくるんだよっ! …もう、もう、傷付くのは嫌だ…嫌なんだ…」 言いながら涙がじわりと膜を張る。女々しいけど、ぽろぽろと心の声が飛び出していった。 突然、自分より大きな温もりに包まれた。 いつもの香水が俺の鼻腔を擽る。 ニールの宥めるような甘えるような声が耳元で囁かれる。 「俊樹…ごめん…傷付けて、ごめん…… だから、全て俺が悪かったんだ… 身体を奪って俺に溺れさせれば、本当に俺のことを愛してくれると思ってた…でもそれはやっぱり間違いだったんだ。 真正面から打つかるべきだった。 俺をどう非難しても構わない。 殴ってもいい。 でも、俊樹のことを『愛してる』と言わせてくれ、頼む…」 「…狡い…ニール、お前は狡いよ…」 「あぁ、狡いな。俺は卑怯者だ。」 「…お前なんか…お前なんか……」 涙が溢れて言葉が続かない。 強く抱きしめられて、何が何だか分からない。

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