66 / 174

マジかそんな馬鹿な嘘だろ(2)

ニールの手が、俺の髪を撫で背中を撫でる。 その頃にはもう、大号泣でしゃくり上げている状態で。 お前は幼稚園児か、というくらいの勢いで泣いていた。 大人になって、いや、物心ついてから、こんなに泣いたのは初めてかもしれない。 心の闇を全て洗い流すように、ニールに抱かれて俺は泣き続けた。 俺だって、ニールのことを愛してしまっていたんだ。 報われない恋に、眠れず食事も取れない程に。 それがどうだ? ニールも俺のことを愛してくれていたなんて。 これは夢じゃないのか? 目覚めたら、独りぼっちでダンボールの山に埋もれていた、ってオチがつくんじゃないのか? 「俊樹。」 びくっ 「もう、泣かないで。 信じられないなら、何度でも言うよ。 愛してる。俊樹のことを心から大切に思っている。 だから、だから泣かないで。」 「…夢…」 「ん?夢?」 「夢、じゃないのか?」 「じゃあ、触ってごらん?俺は今、ここに、存在している。 そして、お前を抱いている。」 ニールは俺の両手を取ると、自分の頬に挟み込むように当てた。 「ほら。本物だろ?」 そして、片方ずつの手の甲にキスをした。 「もっとちゃんと俺を確かめてほしい。」 ふわりと持ち上げられ、寝室に運ばれて行く。 何をされるのか理解したその時になって、俺はやっと満のことを思い出した。 「満っ!満が」 「さっき気を利かせて鍵掛けて出て行ったよ。 だから今、ここには俺とお前の2人っきりだ。」 ニールは軽々と俺を運び、ベッドにそっと下ろして跨ってきた。 「俊樹、愛してる。」 無数のキスが降り注ぐ。 優しく、軽やかに。 時折、リップ音が聞こえていたけれど、自分の心臓の音にかき消されて、やがて聞こえなくなっていった。 なし崩しに抱かれてもいいんだろうか。 でも、目の前の愛おしく思う男の匂いや声、息遣いに翻弄されていく。

ともだちにシェアしよう!