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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(9)

それからのことは、正直、あまりよく覚えていない。 ひたすらに身体を揺すりくねらせ、女のような甘い声を上げて、ニールと抱き合った。 頭はぼんやりしているのに何処か鮮明で、ニールの息遣いや匂い言葉の端々は、はっきりと耳や鼻に…そして身体の奥に残っている。 「愛してる」 「俊樹、離れるな」 「俺だけを見ろ」 「一生…離さない…」 甘い言葉の羅列は脳を溶かし、身体を弛緩させていった。 青い瞳は誠実に物を言い、引き込まれていく。 俺はただ、与えられる快感だけを拾い上げていた。 意識が飛んで暫くして…外の明るさに気が付いた。 隣に人の気配がして驚いて顔を向けると、端正なニールの顔が目の前にあった。 吃驚し過ぎて心臓が止まりそうになる。 え…何で… フリーズして考えた挙句、やっと今朝の行為を思い出して、全身が熱を帯びる。 俺…愛されてたんだ…… 何度放ったか分からないニールの体液と汗と、自分の物でぐちゃぐちゃになっていたはずの身体は、さらりとしていた。 一体今、何時なんだろう。 ニールを起こさないように、そっと身体を半回転させたところをバックハグされた。 「俊樹、何処行くの?」 「ニっ、ニール…」 「まだダメだよ。ここにいて。」 「そんな呑気な…今、今何時なんだ?ニール、お前仕事は!?」 「んー…昼の1時過ぎたところか…うちも優秀な秘書がいるから問題ない。 それより俊樹、身体は何処か痛くないか? 意識飛ばす程無茶させたからな…ごめん。 そうだ、腹減ったな。キッチン借りるぞ。何か作ってくる。」 ニールは俺の答えも待たずに唇を塞いだ。 そして、軽いリップ音を残して下着だけ穿いて、出て行った。 これは…夢じゃないのか? ベタだけど、頬を抓ってみた。 痛い。 マジで痛い。 起きあがろうとして、自分の身体を見て固まった。

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