75 / 174
マジかそんな馬鹿な嘘だろ(11)
さっきから、心臓が口から飛び出して何処かに行ってしまいそうだ。
……とにかく着替えよう。
クローゼットから適当に服を出して着替えた。
ふぅーーっ…と数度大きく呼吸を繰り返し、自分に言い聞かせる。
少し落ち着け、俺。
コンコン
ベッドの端に座り深呼吸していると、遠慮がちな小さなノックの音がした。
「俊樹…冷蔵庫漁って悪かったけど…ご飯できてるから…」
ドアの外からの呼び掛けに、随分とお腹が空いていることに気付いた。
「…分かった…今行く。」
遠慮はいらない!
だって俺の家じゃないか!
がっ、と立ち上がりドアを開けた途端、さっきまで感じなかったいい匂いに反応してお腹が鳴った。
「…ニール、お前が作ったのか?」
「そうだよ。一応、俺は一通りの家事はできるんだ!
人ん家の冷蔵庫、勝手に漁るのも気が引けたんだけど、流石にお腹が空いちゃって…ごめん。
味は保証するから、食べてみてよ!」
ちょっとドヤ顔のニールを無視して、ダイニングの椅子に座った。
テーブルには、何かを薄焼き卵で巻いたような物が、野菜を添えて皿に乗せられていた。
オムレツ?
「ニール、これ何?オムレツ?」
「うん、そう!
冷凍庫にポテトサラダがあったから。それだけでも十分美味かったんだけどさ、オムライス風に卵で巻いてみた。」
「へぇ……」
俺もずっと自炊してるけど、誰かに自宅で作ってもらうなんて久し振りだ。
ニールは嬉しそうに俺の目の前によそったばかりの茶碗を置いた。
目の前でホカホカと湯気を立てる白いご飯と味噌汁に、ごくりと喉が鳴った。
「…いただきます…」
お椀に口を付けて、ひと口啜る。
「…美味い……」
出汁の良く効いた揚げと大根の味噌汁が、お腹に染みていく。
俺のひとり言を聞いたニールは満面の笑みで
「良かったぁ!」
と、ガッツポーズを取った。
ともだちにシェアしよう!