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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(13)
玄関に山と積まれた荷物を前に、俺は暫し放心していた。
調子に乗った買い物のツケだ。
引越しまで考えた奴が、何やってんだよ。
自己嫌悪……がっくり…力が抜ける。
「俊樹ぃー!何頼んだんだ?…って、何これ?」
「…何も言うな…俺は今、浮かれてた一昨日の俺自身を殴りたい…」
「家具って言ってたよな…お前、新生活を始める新卒のサラリーマンか?
今使ってるのはどうするんだよ?」
「…ちょっと待って…頭の整理をしてる…」
と、そこへ、LINEの着信が鳴り響いた。
「…こんな時に…誰だよ…」
リビングに戻り画面を見ると、そこには『満』の文字が……
「マジか…」
無視していても、何度も何度も掛かってくる。
「いい加減に出てやれよ。アイツはアイツで相当心配してるんだぜ。」
「…分かってる…」
覚悟を決め、意を決してリダイヤルした。
ワンコールもしないうちに、満の大声が耳にわんわん響いてくる。
『俊樹っ!?お前、何考えてんだ!?
退職届は却下!!もう破り捨てたからな!
明日から通常通り出勤だ!
その、とっ散らかした荷物の整理は今日のうちに元に戻しておけ!
…ニールん家に行くなら止めはしないけどな。
檸檬も心配している。代わるぞ。
黒原さんっ!!!
ちゃんと…うえっ、ひぐっ…ひぐっ…明日、えっぐ、お待ち、してますからっ…うっ、うっ、うぐっ…
俊樹。言いたいことがあるなら明日きちんと聞くから。
明日は出社しろ。いいな?』
一方的に捲し立てられて切られた。
謝罪の言葉一つ言えなかった。
オマケに檸檬君まであんなに泣かしてしまってる。
大人気ない俺。
はぁ……
突然、ふわりと温もりに包まれた。
頭をそっと撫でられている。
振り解くこともできずに、なすがままに抱かれていた。
おずおずと回す背中の広さに戸惑いながらも、頬に当たるがっしりとした胸筋に身体を預けた。
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