78 / 174

マジかそんな馬鹿な嘘だろ(14)

とくん とくん とくん ニールの心臓の音が俺の身体に染み渡ってきて、俺のと共鳴している。 頭の天辺にされたキスは段々と下へ降りてきて、唇を塞いだ。 「んっ」 下唇を食まれ、口内に侵入してきた舌に弄ばれて、まるで媚薬を流し込まれたように動けなくなっていた。 ちゅくちゅくという水音がやけに響いて、かっと身体が熱くなってくる。 「俊樹…俺に…俺だけに甘えろ。氷の鎧は脱いでしまえ。 どんなことからも俺が守ってやる。 お前らしく息ができるように…」 耳元で囁くニールの声が、じわじわと胸に溜まっていく。 「ニール…」 胸元に差し込まれる熱い手の平に、身体の芯が震える。 容易く探し当てられた胸の粒は、ニールの指に摘まれ弾けそうだった。 流される。 流されたい。 愛したい。 愛されたい。 濃さを増すキスに溺れそうになったその時、微かに残っていた理性が俺を現実に引き戻した。 「ニール、待って…」 「俊樹?」 「…これ、片付けなきゃ…」 「このまま(うち)に運べばいいじゃないか。 すぐに引越しの手配をしよう。」 「それはダメだ。」 「何故!?俺達は結婚を誓い合った恋人だろ? 一緒に住めばいいじゃないか。 何故ダメなんだ!?」 「…物事には順番がある。 俺達はお互いの家族の承諾を得ていない。 一時の感情で突っ走ることができる程に若くもない。 ましてや男同士だ。 色々とクリアしなければならない問題がある。 俺達が思っているより単純なことではないんだ。」 ニールに話しているうちに、色ボケしていた頭が段々クリアになっていく。 ニールはじっと俺の顔を見つめ話を聞いていたが 「…分かった。とにかく退職は撤回、引越しは中止。 それでいいんだな?」 俺は黙って頷いた。 「俺達は恋人。これも間違いないな?」 「っっ…今更…」 頬が染まるのが分かる。

ともだちにシェアしよう!