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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(16)
(まぁ、早く片付くならいいか)と思い直して、ニールの言う通りに引き取って貰う物を一カ所に纏めていった。
それと同時に手早く拭き掃除なんかを済ませなから、到着したばかりの真新しい家具を組み立て、カーテンも付け替えていく。
「ニール、手慣れてるな。」
「あぁ、若い頃バイトしてたからな。
今も偶に駆り出されることがある。」
「そうなんだ。今来てくれる所か?」
「そうそう。人使いが荒いんだよ。ははっ。」
「それにしては楽しそうだな。」
「当たり前だろ?
恋人の部屋を一緒に新しく配置換えしてるんだぜ?
“初めての共同作業”で、こんなにワクワクすることあるか!?俺は今、楽しくって堪らないんだ。」
屈託なく笑うニール。
「“共同作業”って…その言い方…」
「え?気に入らないのか?」
「気に入るとか、気に入らないとか、そう言うことでは……」
ピンポーーン
「あ!多分アイツらだ。」
ニールはダッシュでインターホンを覗いた。
「どうぞ!入ってくれ。」
ドアを解錠したニールは、玄関の鍵を開けに行った。
俺のことを何と説明するつもりなんだろう。
取引先の秘書?まんまだな。
知人?うん、無難な紹介だな。
賑やかな話し声が近付いてくる。
何となく落ち着かなくてソワソワしていると、ニールを先頭にガタイの良い男が2人入ってきた。
「初めまして。お世話になります!
『株式会社べんりー君』の取締役社長の向山 誠一 です。
ニールとは学生の頃からの付き合いで、時々手助けしてもらってます。」
丁寧に名刺を渡されたけど、生憎俺のは手持ちがなかった。
「ご丁寧にありがとうございます。
急に連絡差し上げたのに、対応していただいてすみません。
私の名刺は」
「堅苦しいことなしで!俊樹さん!
運ぶ物はどれ?」
俊樹さん!?
「は?」
「あ、ごめんごめん!
ニールがマジ惚れって言うから、どんなひとかと思ってたんだ。」
ニールを睨みつけると、横を向いて視線を逸らしている。
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