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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(17)

そんな俺の様子に、向山さんは気不味そうに頭を掻きながら 「あっ、馴れ馴れしくてすみませんっ。 俺達、ニールから散々惚れた相手の…まぁ、つまりはあなたのことなんだけど…愚痴やら惚気やら聞かされてたんで…」 「はぁ…」 「今、『思いを遂げた』と聞いて嬉しくって、つい。 ずっと話を聞いてたから初対面とは思えなくって…なぁ、拓人?」 拓人、と呼ばれたもう1人の男性が「うん」と頷くと 「コイツは見てくれもこんなだし、肩書きもご立派で派手に見られるけど、中身は違うんですよ。 真面目だし一途だし。嘘は付かない、良い奴です。 末永く大事にしてやって下さい。」 「おいおい、お前ら俺の保護者かって。」 「ははっ。似たようなもんだろ? あ、俊樹さん。俺と拓人も“そう”だから。」 向山さんはそう言うと、拓人さんの左手を掴み、自分の左手も俺の目の前に差し出した。 目の前に、キラリと光るそれらは… 「あ…結婚指輪…」 2人は顔を見合わせて、くふっ、と笑うと 「色々考えて悩んで…俺達は養子縁組をしたんですよ。 拓人は俺の『戸籍上の息子』。 法的にも家族です。あ…どっちの両親からも勘当されてますけどね。 そうだ!俺達のことは置いといて! 仕事だ仕事! 俊樹さん、処分するのはどれですか?」 色んな意味で、勢いに圧倒されて 「あっ、こっちです。」 と案内する。 2人は電卓を叩きながらあれこれ確認し、伝票に記入していたが、やがて 「とても大切に使われてたんですね。これなら売れますよ。 金額は、この通りですが…如何ですか?」 「『(ニール)価格』で勉強してるんだろうな?」 「あったりまえだろ?採算度外視だよ。 特別だぜ、俊樹さん!」 「ありがとうございます。これでお願いします。」 「はい、毎度あり! 拓人、お支払いよろしく。」 俺がお金を受け取る間に、ぐるりと部屋を見渡した向山(誠)さんは、「ついでだから」とあっという間に、ニールと拓人さんで残りを仕上げてしまった。

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